「共働き3.0世代」という家族の在り方が増えていることをご存知でしょうか?
現代の労働環境は急速に変化しており、特に共働き家庭においては、その変化が顕著に見られます。新しい技術の導入、リモートワークの普及、そしてワークライフバランスの重要視化が進む中で、共働き夫婦の働き方や生活スタイルも大きく変わりつつあります。
本記事では、この新しい世代の特徴と、彼らが直面する課題やチャンスについて深掘りしていきます。
共働き世帯は年々増加。
一方、“ワーママ”の働き方は非正規が半数超え
男女共同参画白書によると、昭和55年以降、夫婦共に雇用者の共働き世帯は年々増加し、平成9年以降は共働き世帯が男性雇用者と無業の妻から成る世帯、つまり専業主婦世帯を上回っています。(下記の図参照)
画像元:男女共同参画白書 令和4年版 2-15図 共働き世帯数と専業主婦世帯の推移
一方で、「共働き」の中身は変化しているのでしょうか。
厚生労働省が発表した「児童のいる世帯における母の仕事の状況の年次推移」をみてみると、2004年(平成16年)以降、「仕事なし」の母は減少していることに比例して、正規の職員・従業員、非正規の職員・従業員はいずれも徐々に増加しています。正規、非正規の差は埋まってきてはいるものの、2022年(令和4年)時点で、非正規が正規を上回っています。
参照:厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況
つまり、共働き自体は増加傾向にあり、ワーキングマザーに占める正社員は増加していますが、未だ全体の半数以下なのです。その背景には、多くの共働き世帯において、家事育児は女性が担うものであるといった家庭内における性別的役割分担が旧世代型で止まっているためではないかと考えます。
次に、旧世代型の家族の在り方とその変遷、私たちが考える新世代型、つまり「共働き3.0世代」の特徴について説明していきます。
男は仕事、女は家庭だった「共働き1.0」
昭和〜平成初期の「共働き1.0」世代は、女性は妊娠したら仕事を離れ、子育てが落ち着いたらパートや非正規雇用で社会復帰をするということが“普通”でした。
一方、男性は朝早く会社へ出勤し、残業や深夜におよぶ会議、会食や接待等で夜遅くに帰宅するなど、家庭は二の次で仕事に身を捧げることが善しとされていました。
現在、ワーキングペアレンツとして働く30〜40代の皆さんの親・祖父母世代は、このような働き方、そして家庭内における性別的役割分担を目の当たりにしてきたことでしょう。
母になっても働ける…一方で負担は減らない「共働き2.0」
2010年頃、育児・介護休業法改正等により、女性が妊娠・出産後も職場復帰できるということが、企業側にとっても必須となりました。例えば、時短勤務が取得できる、育休取得できるということが当たり前に…。これが「共働き2.0」世代の始まりです。
ですが、父親側、男性側の働き方は変わることがなかったため、家庭内における性別的役割分担は大きく変化しませんでした。母親側が主体となって家事育児をしなければ家庭は回らず、仕事と両立することができず、退職を余儀なくされた人も多くいたことでしょう。こういった背景から「ワンオペ育児」という言葉が生まれた時代でもあります。
女性、母親が保育園の送迎から、子どもの病院・看病、そして日々の家事を担い、そして仕事もする。そのような環境で、管理職や新しい仕事にチャレンジすることを躊躇う女性も多かったのではないでしょうか。
「共働き3.0」時代、キーワードは性別的役割の変化
2019年に始まったパンデミックは、国内外における働き方に大きな変化をもたらしました。リモートワークを導入する企業が増え、男女問わず、家族と過ごす時間が急増。この変化は、母親側には「リモートワークやフレックス制度を使えば、フルタイムでも仕事と家庭の両立が叶うかもしれない」という希望を与え、父親側には家族と過ごす時間の大切さや、家事育児の大変さを身を持って感じさせてくれました。
弊社には、ワーキングペアレンツのメンバーが多く所属していますが、男女問わず保育園や学童の送迎をしています。他の親御さんも男女関係なく、対応できる方が送迎をしている光景が増えてきました。
家庭内における性別的役割分担が、徐々にフェアな在り方に変わってきているのです。そして、こういった在り方を目指している人たちのことを、「共働き3.0世代」と私たちは名付けました。
実際に、令和5年度の「男女共同参画白書」でも、意識調査の結果から、「男性は仕事」「女性は家庭」の「昭和モデル」から、全ての人が希望に応じて、家庭でも仕事でも活躍できる社会、「令和モデル」に切り替える時であると言及されています。
しかし、まだまだこの役割分担がどちらかに偏っているという家庭も大多数だと思います。しかし、夫 / 妻と対等な関係でありたいという希望や、「2.0的な考えのままではいけない」という意志を持った人が増え、「共働き3.0」世代の在り方が広まり始めているのではないかと考えます。
その結果ともいえるのが、ワーキングペアレンツのためのハイクラス転職サービス「withwork」の新規登録者における、男性の登録者数の増加です。
2022年、10%に満たなかった男性登録者の割合が、2023年には26.3%に急増。(下記図参照)現在も継続して男性の登録者が増えています。「男でも、キャリアとライフをトレードオフにしたくない」「仕事が好きな妻のキャリアを応援するために、家事育児の負担を平等にしたいが、今の職場では難しい」といった男性の声が多く寄せられました。
「子どもが生まれたら、こうあるべき」といった固定概念を、男女ともに手放しはじめているのです。
「何もかも男女平等」が正解なのか
では、この「共働き3.0」時代に社会はどうあるべきなのか。先ほども性別的役割という言葉に触れましたが、キャリアにおいても、ライフにおいても男女ともに50:50な状態であることが絶対的理想とは言い切れません。
共働き1.0世代的もしくは2.0世代的考えを捨てて、全員が3.0世代になれば良いというわけでもありません。むしろ、「多様な共働きの在り方が受け入れられている」という状態が大切なのではないでしょうか。
共働き2.0世代までは、男性が保育園に送迎に行ったり、公園で子どもを遊ばせたり、料理をしたりと家事育児に参加していることを見聞きすると、「良いパパですね」と言われる。ですが、女性は同じことをしても「良いママですね」と言われるわけではありません。この違いの背景にあるのは「性別的役割分担に対する無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)」です。この偏見が変わっていくことで、様々な立場の人が生きやすくなるのではないでしょうか。
男性側も女性側も50:50の役割分担の家庭もあれば、今までは女性側70%、男性側30%で男性よりも女性に偏っていたところが、様々なきっかけにより逆転して、男性側がより家事育児を担い始めた家庭もあると思います。
先日も、弊社メンバー(女性)が「夫が仕事も家事育児も頑張りすぎて、パンクしそう」と話していました。こういった多様な家庭の在り方が受け入れられている状態が理想だと考えています。
組織の中で、共働きの世代交代を起こす
こういった多様な在り方が受容された状態を構築する際にハードルとなるのが、同質化された意思決定層の存在です。
共働き1.0世代として「男は仕事、女は家庭」を貫き、一定の成果を出してきた人たちが、現在においてもこの考え方を持ったまま、様々な企業の意思決定層に存在しています。共働きや子育てに対して理解があるとはいえ、共働き2.0世代のイメージしか持っておらず、男性が家事育児に積極的に参加することに対しては理解がないという現状があると考えます。
よくある事例ですと、子育て中のメンバーのエンゲージメント向上や離職防止のための特別な支援や制度を作っても、根本的な組織のカルチャー変革には繋がらず、誰しもが働きやすい職場にはなれない、といったことが起きています。
そういった組織の中で、リーダークラス、メンバークラスが共働き3.0世代的価値観を持ちたい、もしくは持っていこうと思っても、全く活かされないということが起きていき、生きづらさに繋がるのです。そして、生きづらさが働きづらさに繋がり、組織から離れていく…ということが起きるのです。
実際に、withworkにご登録いただいた転職検討理由にもこんなものがあります。
現在、子どもを1人育てながら、夫婦で共働きしています。現職の待遇、仕事内容に大きな不満はないですが、通勤時間が最大のネックとなり、どうしてもパートナーの負担が大きい状況です。(30代後半男性)
私が仕事に力を入れるほど家庭へ注ぐエネルギーが少なくなります。子どもはきちんと手をかけてあげたい年頃ですが、今のまま仕事の責任が重くなっていけば、それも叶わない状況が予想されます。なお、実家の助けはなく共働きです。家庭との両立に満足が行っていないことが、転職を考えた最大の理由です。(40代前半女性)
現在0歳児の育児中です。夫婦で同じ会社で共働きをしており、入園後は夫が時短勤務で送迎しています。今後、小1の壁にぶち当たるため今から勤務時間や勤務形態にもっと融通のきく仕事ができないかと考えています。(30代前半女性)
こういった旧来の考えを持つ意思決定層とは異なる「共働き3.0」世代が、意思決定層になることで、この価値観がどんどん社会に浸透していくーーそういった変化を起こさないといけないなと思ってます。
フェアでサステナブルな労働市場を作るために
withworkは、多様な在り方を受け入れる「共働き3.0」世代的な考えを広めるために、人材紹介事業を通じて、人材の流動性を高めることに取り組んでいます。
これからの時代、子育て以外でも介護や不妊治療、自身の病気など様々な制約を抱える人が増えていきます。つまり、誰しもが制約を抱えるような時代がくるのです。
制約がない人しか自由に働けない・機会を得られないとなれば、制約がある人は自身の労働力を活用できない社会になってしまいます。この状態が続けば、いずれ深刻な労働力不足に陥ります。
これまでに言及したような価値観を体現する人たちを企業のリーダー層に押し上げた事例を増やすことで、多様な人材を受け入れ、活躍できる組織づくりに貢献するーーこういった変化を起こすことで、労働市場そのものがサステナブルになっていき、サステナブルな社会構造になっていくのではないかと考えます。
そういった循環を大きくしていくために、まずはこの「共働き3.0」という概念を皆さんに知ってもらえたらと思います。