男性育休が義務化されたり、働き方の多様化が進むにつれて「父親の家庭進出」が加速しています。
保育園の朝の送り時間に子どもと手を繋いだパパの姿を見かけることが、もはや普通の光景になっている地域もあると思います。
また、在宅ワークが浸透した影響もあるのか、少しずつお迎え時間でもパパとの遭遇率が増えた実感があります。
昭和から平成の時代を経て、令和の現代まで「父親の役割」はどのように変化してきたのでしょうか。
そしてこれからどのように変化していくのでしょうか。
固定化され、変化してこなかった「父親の役割」
皆さんが幼い頃から親しんできたアニメやドラマ、CMや書籍などのコンテンツにおける「家族」の描かれ方を思い浮かべていただくと「働くのはお父さん、家のことはお母さん」という性別役割分業がされているものが多かったのではないでしょうか。
お父さんが遅い時間に仕事から帰宅して、ネクタイを外しながらそっと寝室のドアを開けて子どもの寝顔を見て「疲れがふっとぶなぁ」と言っているようなドラマのワンシーンを思い浮かべた方もいると思います。
「男は仕事、女は家庭」という価値観が「普通」とされ「会社員の夫と専業主婦の妻、二人の子ども」という家族構成を「標準世帯」として、それを前提として様々な社会の仕組みが作られてきました。
そんな時代において、大黒柱として家族を経済面で支えることが父親の役割として大きなウェイトを占めてきました。
一方で「女性活躍」が進むことで働く女性が増え、1996年には共働き家庭と専業主婦家庭の数が逆転し、現在では倍くらいになっています。
しかしながら「女性の社会進出」が進む一方で「男性の家庭進出」は進んできませんでした。
総務省の調査によると、6歳未満の子どもがいる家庭について、夫と妻の1日あたりの家事育児時間は、2021年の時点で夫が1時間54分、妻が7時間28分となっています。
2016年と比較すると、夫は31分の増加、妻は6分の減少と、夫婦の差は縮小している一方で、まだまだ差は大きいといえます。
このように「母親の役割」が「仕事も家庭も」になっていく中、「男性の役割」は「大黒柱(仕事メイン)」であり続けてきた時代が昭和から平成にかけて続いてきました。
その傾向は「イクメン」という言葉が誕生し、積極的に子育てをする父親を称賛するムードが起きてきても、残念ながら大きく変化することはなかったように思います。
父親の家庭進出を後押しした2つのきっかけ
そんな状況を変え、父親の家庭進出を後押しするきっかけになった出来事が2つあります。
男性育休の義務化
厚生労働省が「イクメンプロジェクト」を発足し、男性の育休取得や子育てへの参画を促進してきましたが「啓蒙では状況が改善しない」という実態を反映し「男性育休の義務化」という法改正がされました。
政府の男性育休取得率目標も2025年までに50%、と2030年までに85%と上方修正され、企業が本気で取り組もうという機運が高まっています。
その効果もあり、2023年度の男性育休取得率は30.1%と、前年度の17.1%から大きく上昇しました。
取得期間も、2018年度には「2週間以上」が28.6%であったのに対し、2021年度には48.5%と、前向きな変化が見て取れるようになりました。
在宅ワークの定着
2020年からのコロナ禍で、それまでも推進はされていたものの定着率が非常に低かった「在宅ワーク」が急速に定着しました。
総務省の調査によると、在宅ワークの導入率は、2019年には20.2%であったのに対し、新型コロナウイルス流行後の2020年には47.5%、2021年には51.9%と大きく上昇しています。
父親も母親も在宅ワークすることが珍しいことではなくなり、オンラインミーティングの画面にお子さんが登場するシーンを経験された方も多いのではないでしょうか。
在宅ワークを経験した父親からは「子どもに関われる時間が増えた」「通勤がなくなって保育園のお迎えに行けるようになった」などのポジティブな声や、「これまで妻に家庭のことは任せてきてたけど、子どものいる生活がここまで大変だとは知らなかった」という反省の声が聞かれるようになりました。
多様性推進や働き方改革の流れと、これらのきっかけが相まって、男性の家庭進出は加速度的に進んできています。
子育てを積極的に頑張りたい父親を悩ませる2つの要因
このように「男性の家庭進出」が進む中で「悩めるお父さん」が増えています。
現代の父親を悩ませる要因としてどのようなものがあるでしょうか。
「男は仕事」という価値観とそれを前提とした社会構造
少しずつ解消されてきたとは言え、未だに男性のほうが長時間労働になりがちだったり、出世して給料を増やしていく大黒柱であり続けることが求められてしまう現状があります。
職場の上司から「子どもも生まれたし、これからは一層仕事頑張らないとな!」と言われてしまうケースなどはよく耳にします。
積極的に子育てに参画したい思いと職場環境がマッチせず、両立に悩む男性が増えてきています。
実際に、共働き&子育て世代の転職サービス『withwork』にも、キャリアとライフをトレードオフにしない柔軟な働き方ができる企業への転職を検討する男性の登録が増えています。
男性ユーザーさんは、2023年には前年比6.5倍となっております。
「育休を取得したいけど、現職では取れるような雰囲気ではない」
「家庭も大事にしたい男性社員を受け入れてくれるカルチャーの企業で働きたい」
「自分自身のキャリアを大切にしつつも、妻のキャリアも応援したい」
ご登録されたユーザーさんからはそうしたお声をいただきます。
自身の中の男らしさのバイアス
もう一つ、見落とされがちなのが「自身の中の男らしさバイアス」です。
例えば「男子厨房に入らず」とか「男は弱さを見せてはならない」などの「男らしさバイアス」は、多かれ少なかれ男性の中に内在化されているケースが多いです。
子育てをしていると、思ったとおりにいかないことばかりで悩みも尽きないし、乳幼児期は睡眠不足になったりするし、精神面、体力面ともにコンディションが落ち込むことも多々あります。
そんな時に悩みを相談して解決策を見出したり、子育てトークをしてスッキリしたりすることができれば良いのですが「弱さを見せてはいけない」という自身の規範がその障害になってしまうことがあります。
自身の中に「男らしく、強い父親像」を持っていると、実際の自分とのギャップが大きくなり悩みが深うなりがちです。
家庭も仕事も頑張りたい父親に考えてほしい「私の役割」
「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という言葉があるように、誰しも自身の経験や接してきた情報から何らかのバイアスを無意識に持っています。
バイアスを持っていること自体が問題ではありませんが、無意識のバイアスが他者を傷つけたり、時に自身を縛っていたりすることがあります。
家庭も仕事も頑張りたい男性にとって「父親はこうあるべき」「男たるものこうあるべき」といったバイアスが、無意識に自身を縛ったり苦しめていることはないでしょうか。
例えば「休日に子どもとキャッチボール」みたいなのが「昔ながらの父親固有の役割」として想起されますが、母親が子どもとキャッチボールすることも、父親がご飯作ったり洗濯することも何らおかしなことではありません。
妊娠・出産・授乳以外に母親にしかできないことはありませんし、ミルク飲んでくれる子であれば授乳も男性が代わることができます。
自身が囚われている、縛られているバイアスを自覚して、できる限りそこから自由になることで「誰かに規定された父親の役割」ではなく「我が家における私の役割」をフラットに考えることができるようになります。
「私の役割」を見つけるためにやってみると良いこと3選
ここまで読んでいただき「とはいえ具体的に自分の役割ってどうしたら明確になるんだろう」と思われた皆さんに、いくつかオススメしたい「やってみると良いこと」を提案します。
①夫婦で役割分担を話し合う
「父親の役割」の上位に「親の役割」があり、それを夫婦で何となく分け合っている方が多いと思います。
この「何となく」というのがくせ者で、自分が良かれと思ってやっていることが相手に「それじゃない」と思われていたり、適切だと考えている分担比率が実はアンバランスだったりすることは多々あります。
シンプルに「役割分担を見直してみたい」と妻に相談してみましょう。
認識できていないけど妻が担っていてくれたことが見つかったり、夫婦間の考え方の違いが見つかったりするかもしれません。
お互いの考えを「ぶつけ合う」のではなく「知り合う」ことから始めて、話してくれたことに感謝し合った後に「じゃあこれからどうしようか」と落とし所を見つけていきましょう。
②社内のパパ同士で話してみる
社内の同期や同僚の中で、年の近い子どもを持っている人に「パパトークしよう」とランチに誘ってみたり、社内のチャットツールで「パパトークチャンネル」を立ち上げてみるなど、社内のパパ同士で繋がりを作ってみましょう。
同じ会社の文化や共通言語を持っている分、共通の話題も見つかりやすいですし、ベビーシッター代補助など知らなかった社内制度について教えてもらえたりするかもしれません。
③社外のパパコミュニティに顔を出してみる
社内のパパ同士の繋がりはとても貴重ですが、同じ社内であるがゆえに話しにくいことがあったりするケースもあります。
そんな時にオススメなのが、利害関係のない社外のパパとの繋がりを作ってみることです。
調べてみると地域のパパコミュニティがあったり、パパ向けのイベントをやっている団体があったりします。
似た立場のパパ同士の繋がりに救われたり、利害関係なく等身大で本音を語り合えたりすると、自分の持っているバイアスに気づいたり、肩の荷をおろしたりする効果も生まれます。
「仕事も家庭も両立できる自分でありたい」と思ったら
社会はまだ変化の途上にあり、ままならないことも多くありますが、現代を生きるパパたちが自分らしい働き方、父親の役割を模索していけるよう、私たちwithworkも転職支援を通して応援していきます。
子育て中でも家庭を犠牲にしない働き方をめざし、自分の理想のキャリアを描いていきたいユーザーさまに、withworkは徹底的に寄り添います。
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