withworkを運営するXTalentは、「男性は仕事中心、女性は家庭中心」というステレオタイプを超え、家事や育児においてフェアな分担を⽬指す「共働き3.0®︎」を提唱しています。このたび、男女問わずキャリアとライフをトレードオフにしない働き方を掲げる企業さまへのインタビュー企画がスタートしました。
今回は、2024年4月に株式会社スープストックトーキョーの取締役社長に就任した工藤萌さんが、withworkを運営するXTalent株式会社代表の上原達也、XTalent経営アドバイザーであり株式会社マクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈と対談。スープストックトーキョーの働き方にまつわる取り組みや、工藤さん自身の仕事への向き合い方、共働きに対する考えなどをお聞きしました。前編・後編に分けてその内容をお届けします。
前編は、スープストックトーキョーが「社員が人生を豊かにする選択をできる会社」を実現するための取り組みに迫ります。
▲左:XTalent代表・上原、中:スープストックトーキョー取締役社長・工藤氏、右:XTalent経営アドバイザー兼マクアケ共同創業者/取締役・坊垣氏
「世の中の体温を上げる」理念のもと、誰もがスープを楽しめるシーンを増やしていく
上原:今日はよろしくお願いします! はじめに、スープストックトーキョーの企業理念や事業内容、その想いについてお聞かせいただけますか?
工藤:当社は「世の中の体温をあげる」という理念を掲げて、スープという商材を中心に成長してきた会社です。直営およびFC店舗、ファミリーレストラン「100本のスプーン」の運営に加え、オフィスや施設、スーパーなどへの導入や、EC事業も展開しています。
理念である「世の中の体温をあげる」には、スープで身体の体温を上げることは、同時に心の温度も上げるという意味が込められています。
この理念は、正社員だけでなく、パートナーと呼んでいるアルバイトやパートの方も共感し、自分事化しているほど浸透しているものです。入社直後から「あなたにとって、世の中の体温をあげるとはどういうことか、どうやったらあげられるだろうか」と考える時間が多くあり、仕事の習慣として当たり前のように存在しています。共感をベースに肩肘を張って浸透させたものではないからこそ、当社は強い組織になっていますし、私自身、理念経営とはこういうことかと肌で感じているところです。
坊垣:マクアケも創業時から理念経営に注力しているので、とても共感します。マクアケでは、「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」というビジョンを掲げて、ものづくりなどの分野における新しいチャレンジを後押しする応援購入サービスを目指しました。
工藤:マクアケ社のような、世の中の常識にとらわれない組織は強いですよね。私自身も、経営者として、あるべき論に左右されない会社のあり方を示していきたいと思っています。
上原:現在、事業として力を入れていることはありますか?
工藤:「Soup for all !」という考え方のもと、食のバリアフリーを強化しています。子どもから年齢を重ねた方まで、健康上や信条、さまざまな制約があっても、ちょっとした配慮で楽しく豊かな食事をしていただけるのがスープだと思うんです。
その考えのもと、お子様が小さいご家族でもゆっくり食事を楽しんでもらいたいという思いから店舗では無償で離乳食を提供していますし、最近では「おかわりしたくなる離乳食セット」が「東京都出産・子育て応援事業」に採用されました。今後は、病院や産後ケア施設、介護施設など、私たちの得意なスープづくりでお一人お一人に寄り添っていける場所への導入を推進したいと考えています。
ただし、やみくもに規模を拡大したいわけではありません。社会的に価値があるものであれば、ソーシャルインパクトを出すために事業成長させるべきというスタンスです。今までも、これからも、私たちの想いを乗せた商品やサービスを届けていきたいと思っています。
上原:スープストックトーキョーのウェブサイトを見て印象的だったのが、スープを「製造」するのではなく、「料理」するという言葉を使っていたことでした。どのような想いがあるのでしょうか?
工藤:当社の代表的なスープは、静岡県にある小さな工場で作っています。効率重視の時代において驚かれるほど手間ひまをかけて、まさに「料理」をしています。それは、心も体も温まるスープづくりは、調味料でごまかさず素材本来のおいしさを引き出すことが大事であると考えているからです。たとえば、スープストックトーキョーのロングセラーである「オマール海老のビスク」は、10時間以上もかけてやっとできあがります。そんな渾身の一杯をファストフードという忙しい現代人のライフスタイルに合わせた提供方法でお出ししているのが私たちの独自性です。
生産者さんと提携する際も、「世の中の体温をあげる」という理念に共感いただける方々と一緒に成長していきたいという想いがあります。そして、理念でつながっているからこそ、社員である私たちは、生産者さんからバトンを受け取った最終ランナーとしての責任と感謝を自覚できると思うんです。
また、スープ作りにあたっては、規格外の食材を使うことや、食材の生産現場を知ることも重視しています。直近では、店長やサポートセンターのスタッフと一緒に富山にあるお米の契約農家さんのところへ行き、田植えや稲刈りをしたり、静岡でカリフラワーの収穫などしてきました。
社員が「人生を豊かにするための選択をできる会社」であるために
▲スープ ストック トーキョー社提供:社員の皆さん
上原:理念に基づいた、すばらしい活動をされていることが感じられます。社員にはどんな方が多くいますか?
工藤:「いい人が多い」とよく言われます。そして私が感じることとしては、利他の心がある人が多いですね。理念である「世の中の体温をあげる」の「世の中」には、社内で働く人も含まれていて、仲間の体温をどうあげられるのかを皆が考えているからだと思います。理念から個性が形成されているのが、当社の特徴です。
組織全体の風土としては、賞賛の文化があります。行動指針に沿って、仲間が良い行動などをしたらカードに書いて渡し合う「賞賛カード」という施策が浸透しているんです。理念を体現する行動として、「目の前の人の体温をあげること」ができたら賞賛し合います。
▲スープ ストック トーキョー社提供:実際の賞賛カード
上原:こういう取り組みが文化になっているのがすごいですね。社員の皆さんはどのようなライフステージにあり、どんなキャリアを歩んでいる方が多くいるのでしょうか?
工藤:平均年齢は約30歳、女性比率が7割です。男女問わず、ライフステージの変化が訪れるタイミングにある社員もいますね。
経営としては、社員が「人生を豊かにするための選択を躊躇なくできる会社」にするために、制度やカルチャーを作っています。一例を挙げると、フレックス勤務制度、セレクト勤務制度(育児のみならず、介護や自己研鑽・起業などに取り組む社員すべてに時短勤務を認める)、ウェルカムバック研修(産休・育休を取得した社員向けの研修)などがあります。
ただ、サポートセンター(本社)と店舗では働き方が違うので、全社の一律的な施策だけでは足りないと思っているんです。特に、スープストックトーキョーの主役である店舗にいるスタッフの働き方については、まだまだ改善の余地があります。
たとえば、シフト制で働く店舗スタッフが子どもの体調不良で急に休まなければならなくなった時、本人が罪悪感を抱かず、かつフォローするスタッフも過度な負担にならないようにしたいですよね。両者が心地よく働くにはどうすればいいのかを、今まさにプロジェクトで検討中です。
上原:最も突発的なことが起こりやすいのが子育てですよね。急な休みを取りにくいことについては、本人の問題というより、病児保育などインフラ不足も大きく影響していると思います。こうした場面でフォローする人へきちんと報いようという話は、最近、他社でも多く聞かれるようになってきました。
そして、制度だけでなく、社員一人ひとりの事情を受容するカルチャーも大切ですね。
坊垣:同感です。ワーキングペアレンツは、突発的なことが起きたときに助け合える「空気」がある会社に転職していくのだろうと思います。
マクアケの例をあげると、こちらから男性社員へ育休取得を促進しなくても、育休を取る男性が多くいるんです。社員の男女比率はおおよそ半々で女性の管理職が多いので、女性が上司だと育休の相談がしやすいのだと思います。
気付けば男性が育休を取るのは当たり前の「空気」になっていて、育休期間の仕事をどうフォローしていくかという話に最初から自然と入る雰囲気があります。
上原:やはり、制度と風土醸成の両面が必要ですね。ところで、スープストックトーキョーでは、DE&I(Diversity, Equity and Inclusion)にはどのように向き合っていますか?
工藤:「Soup for all !」がまさにスープストックトーキョーのDE&Iだと思っています。食のバリアフリーをやっている当社としては、「職」のバリアフリーも実現したいと考えているところです。
私自身、型にはめることが好きではないので、世の中における働き方の変化に伴って、社内の制度もどんどん変えていけばいいと思っています。当社という場が、社員一人ひとりの個性を大事にしながらやりがいを持って働けるプラットフォームになることを目指しているんです。その理想像に向けて、社内ではいつもさまざまなプロジェクトが走っています。そういう意味ではまさにこれから、というところです。
上原:スープストックトーキョーは事業も組織文化も安定している会社という印象がありましたが、チャレンジしたいことがまだまだたくさんあるのですね。
工藤:事業や文化の土台があるからこそ、チャレンジできるのだと思います。私が追い求めたいのは、「こんなやり方があったんだ」とみんなが驚いてくれるような、新しい働き方の形です。働き方改革ではなく、働き方「開拓」ですね。
坊垣:できあがっているものに対する安心感があるからこそ、他のことにもチャレンジできるという点に納得です。
ただ、その安心できる環境がワーキングペアレンツにはなかなかないんですよね。特に女性は、出産の大変さがあります。それでもチャレンジしていける環境づくりを、男女問わずみんなで本気になって考えなければなりません。「女性が大変だ」と女性だけが訴えるのでなく、男性も声をあげていく必要があると思っています。
上原:そうですね。withworkでは、キャリアとライフをトレードオフにしない転職をしようと伝えています。会社が正しい方向に進んでいくことと、社員のライフイベントを大切にすることのどちらかを諦めることは決してしません。工藤さんがおっしゃるように、まさに働き方「開拓」ですね。
主体性にあふれ、想いを共にする仲間とともに歩みを進めたい
上原:工藤さんが社長に就任して3か月が経ちましたが(インタビューは2024年7月に実施)、これから取り組みたいテーマは何ですか?
工藤:人材面では、ライフステージの変化があった社員もそうではない社員も自分らしく心地よく働き続けられる組織づくりです。働きがい、働きやすさの面からも、理念共感があり魅力的な人が自然と集まってくるような状態を目指しています。
ビジネス面でのチャレンジとしては、卸売りの強化などチャネル拡大を考えています。単なる成長のための販路拡大ではなく、皆さんがスープを求めてくださるシーンがまだまだあるので、そこに応えていきたいと思っています。
また、先ほどお話した、食のバリアフリーを拡げる活動はもっとやっていきたいです。例えば、弊社のもう一つのブランドであるファミリーレストラン「100本のスプーン」には、毎日のように特別支援学校の方が来てくださり、噛むことを困難に感じている方へは咀嚼に配慮したメニューを提供しています。私も実際に足を運んでみて、同じ空間にいろいろな人が集っていて、心地よい環境が生まれていると感じました。「Soup for all !」とはまさにこのことだ、と。こういうシーンを増やしていきたいんです。
▲ スープ ストック トーキョー社提供:まさに「Soup for all!」なシーンが日々生まれている「100本のスプーン」
上原:想いを共にして、実行していくための仲間をもっと増やすことは考えていますか?
工藤:創業25年でブランドもある程度確立されている会社ではありますが、やりたいことが溢れていて、まだまだ多くの仲間が必要です。
当社には、やりたいことができるカルチャーがあります。スープストックトーキョーは、創業者である遠山が自分の子どもに食物アレルギーがあったため、手軽に、安心して食べられるファストフードを目指して設立した会社です。こうしたストーリーがあるため、「自分ごと」でビジネスを考え、一人ひとりのやりたいことを尊重する組織風土が根付いています。
私たちは、スープ屋だけど、スープ屋ではない。「世の中を温める会社」だと思っています。
上原:一緒に働く仲間としては、どんな人を求めていますか?
工藤:自分の想いをもつ「発意」、そして「主体性」があることです。
主体性は、自主性とは違うと思っています。自主性は決まったことに対して手を挙げていくことであるのに対し、主体性は、自分の意思でやりたいことをやっていくことです。自分たちが仕掛けることで、社会が少しでも前進することへ情熱を傾けられる方に、ぜひ仲間になってほしいと思っています。
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