人生100年時代と言われるようになって久しい昨今、働き方やキャリアに対する考え方がどんどん多様化してきています。
そんな中「キャリアブレイク」という選択肢に注目が集まりつつあるのをご存知でしょうか。
仕事を一時的に離れ、より柔軟なキャリアの在り方を模索するキャリアブレイクとは一体どんなものなのでしょうか。
キャリアブレイクとは
キャリアブレイクとは仕事を中断し、一定の期間離れることを言います。
休職期間とも捉えられますが、ネガティブなニュアンスというよりは、長期的な休暇を通じて心身のリフレッシュやリスキリング、新しい経験を積むための時間を持つことが目的であり、その後のキャリアパスを見直す機会と捉えられることが多いです。
サバティカル休暇との違い
似た言葉として「サバティカル休暇」があります。
サバティカル休暇とは元々は教育機関や研究機関など、長期休暇を取得しづらい職種において導入された制度でした。
最近では、勤続年数が一定年数を超えた社員に対して付与される長期休暇として導入している企業もあります。
キャリアブレイクは個人の判断で取得するもので、必ずしも勤め先の制度を活用したものではない点がサバティカル休暇との大きな違いです。
キャリアブレイクが注目される背景
現代では「定年までひとつの企業で勤め上げ、引退後は余生を楽しむ」という画一的な生き方が人生のモデルとは言えなくなってきました。
人生100年時代を生き抜くために、定期的な休息やリフレッシュが重要視されるようになってきています。
個々人のライフスタイルや価値観に適応する、より持続可能で柔軟性が高い働き方を求める中で、キャリアブレイクが注目されてきたのです。
キャリアブレイクに至った理由例
キャリアブレイクを取る理由は人それぞれです。
キャリアブレイクは仕事とプライベートのバランスを整えるだけでなく、将来のキャリアにプラスとなる時間を過ごすための重要な機会。
どのような理由であっても、自分自身や環境を整えるための大切な時間となります。いくつか例を紹介します。
現状への違和感
これまでのキャリアや現職での仕事内容に疑問を持っているものの、日々忙しく内省する時間がない…。
そのような時に、一度ゆっくりと新しい道を探るために一度仕事を離れる決断をする方もいます。
家庭の事情
ライフステージの変化に伴い、家庭に専念する時間が必要になることもあります。
家族との時間をしっかり取り、育児や介護などに集中する時間としてキャリアブレイクを過ごすこともできます。
パートナーの転勤や海外帯同により、物理的に現職で働き続けることが難しくなり、離職する方もいるでしょう。
メンタル不調
長時間労働や職場環境のストレスが原因で、心身の健康を取り戻すためにキャリアブレイクを選ぶケースがあります。
新しい挑戦のため
留学や起業、難易度が高い資格の取得など、仕事を続けながらだと物理的・時間的に厳しいといった場合、リソース確保のために離職する方もいます。
ワーキングホリデーに行くため
日本人の場合、ワーキングホリデーの対象年齢は「30歳まで」といった規約があります。
「海外で働く経験をしてみたい」「視野を広げたい」と、チャレンジする方もいます。
キャリアブレイク中の過ごし方例
キャリアブレイクの過ごし方は多岐にわたりますが、目的意識を持って過ごすことで貴重な期間を最大限に活かすことができます。
スキルアップや資格取得に専念
大学院やキャリアスクールに通って新しいスキルを身に着けるのはキャリアブレイクの代表的な過ごし方です。
語学力を高めるために語学留学する方もいます。
海外に行くことが難しい場合は、日本にいながら海外のオンラインプログラムを受講することもできます。
キャリアチェンジやキャリアアップを目指し、新しい分野の資格を取得するための時間確保としてキャリアブレイクを活用する方もいます。
例えば、公認会計士や社会保険労務士などの難関国家資格は働きながら勉強するのが難しく、合格まで長い年月が必要になることも。
集中して勉強し短期合格を目指すためにキャリアブレイクを活用する方もいます。
リフレッシュ・休養
キャリアブレイクは必ずしも何かをしなければいけない期間ではありません。
仕事で疲れた心身を癒し、次のステップに進むためのエネルギーを蓄える時間としてこの期間を使うこともできます。
長期で旅行に出かけたり、デジタルデトックスをしたり、読書をしたり…。
生き方やキャリア観、自分自身について見つめ直すこともできるでしょう。
心身の回復と将来への準備期間とするのも、キャリアブレイクの過ごし方のひとつです。
キャリアブレイクのメリット
「仕事から離れる」という決断は勇気がいることですが、何十年も働く仕事人生において、キャリアブレイクは大切な時間になります。
ストレスからの解放
忙しい日常から一歩離れることで、精神的なストレスから解放されることが大きなメリットのひとつです。
日々の業務や人間関係から距離を置くことで、心身をリセットし、次のステージに向けた新たなエネルギーを蓄えることができます。
どんなに好きな仕事でも、多かれ少なかれストレスが発生するもの。
リフレッシュ期間を取得することは、パフォーマンスを向上させるきっかけとなるでしょう。
スキルアップに全集中できる
自分のペースで新たな知識やスキルを習得する時間を確保できるのもメリットです。
仕事に追われていると、自己成長やスキルの習得に時間を割くことが難しく、せっかく目標を立てても継続できず諦めてしまうということになりかねません。
自分のために、集中した時間を取ると自分で決めることができるのもキャリアブレイクのメリットです。
キャリアブレイクのデメリット
何事にもメリット・デメリットはつきものです。
しっかりとした計画と対処法を備えていれば、キャリアブレイクのリスクを最小限に抑え、メリットを最大限に引き出すことができます。
経済的な不安
無給でキャリアブレイクを取る場合、収入が途絶えてしまいます。
事前に生活費を計算した上で貯蓄をしておき、どのくらいの期間キャリアブレイクの取得が可能か把握しておくといいでしょう。
就業規則上問題がなければ、スキルアップの一環として有償の社会人インターンをすることで収入を得ることもできます。
孤独を感じる
意識的にひとりになることで集中して思考を深めることができるのがキャリアブレイクの魅力ですが、孤独を感じ精神的に不安定になってしまっては本末転倒です。
そのような事態に備えて、地域のイベントやボランティア活動に参加するなどして人との交流を図るのがおすすめです。
新たな出会いや経験を通じた学びも生まれるでしょう。
キャリアブレイク後にみられる3つのパターン
キャリアブレイク後のキャリアの選択肢は多様にありますが、正解はありません。
そのときどき、その人ごとに納得感を持った道に進むことが重要です。
よく見られる3つのパターンをご紹介します。
パターン①:復職する
キャリアブレイクをする直前に勤めていた会社に戻るケースです。
一度現職から離れ、キャリアブレイクを通じていろいろな経験をしたり内省する中で、「やはり現職が好きだ」と納得感を持って復職する人は決して少なくありません。
復職の可能性がある場合はキャリアブレイク前に勤めている会社の休職制度について調べて、制度を活用したキャリアブレイクを取得するといいでしょう。
また、もし退職してしまった場合でも、退職理由などにより再雇用の制度を設けている会社もあるので確認してみましょう。
パターン②:転職する
別の会社に転職するケースも多くあります。
キャリアブレイク中に自分の興味や価値観を見つめ直すことで、新しい挑戦をする意欲が高まり、キャリアチェンジを果たすこともあります。
特に、スキルアップや資格取得、キャリアブレイク中の人との出会いなどが後押しとなることが多いです。
パターン③:独立
起業やフリーランスとしての独立を選ぶパターンもあります。
キャリアブレイク中に取得した資格、特に士業などの場合は独立を決意することもあるでしょう。
また、自分を見つめ直す中で理想の働き方が明確になり、その実現のために独立という選択肢をとる方もいます。
キャリアブレイク後の転職活動のポイント
キャリアブレイクが長期間になると、職務経歴に空白期間が生じます。
転職活動や再就職の際にキャリアの空白期間について尋ねられることがあるかもしれません。
キャリアブレイク後の転職活動において意識すべきポイントも事前に理解しておくと、後悔のないキャリアブレイクが取得できるでしょう。
下手に取り繕うよりも正直に伝える
まず大切なのは、キャリアブレイクの理由や背景を正直に説明することです。
空白期間を無理に取り繕おうとするとストーリーの整合性がつかなくなったり、嘘をついている印象を与え、かえって不信感を招くことがあります。
真摯に理由を話すことで信頼感が生まれます。
また、キャリアブレイクでの経験が今後のキャリアにどのように役立つかを具体的に説明することも重要です。
自分にとって必要な時間であったことを理解してもらえるように話すことを心がけるといいでしょう。
ポジティブな表現で誠実に答える
キャリアブレイクについて説明するときは、できるだけポジティブな表現で説明することも大事です。
「自己成長のための期間」「新しいスキルを習得するための貴重な時間」など、前向きな印象を与える言葉を選択するようにしましょう。
さらに、キャリアブレイクを通じて得た具体的な成果や学びを話すことで次のキャリアに向けた準備期間だったことを強調できます。
キャリアブレイクの価値を伝えらえるよう、ポジティブな視点で誠実に話すことを意識するといいでしょう。
働く意欲が高いことを伝える
キャリアブレイクを終えた直後の転職活動では、働く意欲が高いことを明確に伝えることも重要です。
キャリアブレイクを経て、今後の仕事に対する意欲が高まっていることや、新たなチャレンジに向けてモチベーションが高まっていることを具体的に説明しましょう。
また、スキルアップや資格取得を通じて、即戦力として貢献できる準備が整っていることもアピールポイントです。
積極的に仕事に取り組む姿勢を示すことで、面接官の印象を大きく向上させることができます。
面接などで質問を受けた場合は、キャリアブレイクには意図があり、その期間に何を得たのか、どのような自己成長につながったのかを整理して伝えるようにするといいでしょう。
キャリアブレイク後の転職活動に不安を感じたら…
「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトとしている、ワーキングペアレンツ向けハイクラス転職サービス『withwork』では、育児や介護、パートナーの転勤、海外帯同など、家庭の事情で一旦仕事を離れた方からのご登録&ご相談も多くいただきます。
<転職ストーリー例>
第一子の出産に伴い、専業主婦→フリーランスを経て、正社員として再就職した方の事例です。
▼
「ありのままの自分で活躍できる企業に出会えるはず」“ワーママ”は制約じゃないと気づけた転職活動
「具体的なキャリアブレイク後の転職活動のコツを知りたい」「孤独な転職活動において一人でも多くの味方が欲しい」という方は、ぜひお気軽にご登録&ご相談くださいね。
まとめ
キャリアブレイクは、現代のキャリア形成における選択肢のひとつとして注目されています。
リフレッシュやスキルアップの機会にしたり、家庭に集中する時間にしたり、さまざまな活用方法があります。
長寿社会となり、人生の中で仕事に費やす時間が増える現代人にとっては、より充実したキャリアを築くために必要な時間とも言えます。
自分にとって適切なタイミングでのキャリアブレイクを計画し、持続可能なキャリアを築いていきたいですね。