ワーキングペアレンツのためのハイクラス転職サービス「withwork」がお届けする企業ストーリー。
今回ご紹介するお取り引き企業は、創業期のスタートアップを資金調達の側面から支援する株式会社INQ(インク)。
代表の若林哲平さんは、経営者にして4人の子どもの父親だ。
インスタグラムには、子どもたちのために手作りしているお弁当が並んでいる。
「毎日家族の朝ごはんとお弁当を作ってから仕事を始めます。仕事が終わると小一の子どもを学童にお迎えに行き、夕食を作ってからお風呂、お皿洗いですね。長年ご飯を作ってきたからなのか、高校生の娘との関係も良好です」
そんな若林さんが経営するINQには、プライベートにも仕事にも全力で取り組むメンバーが集まっているという。
仕事のやりがいや事業にかける想い、INQのメンバーが仕事とプライベートを両立できる理由について、代表の若林さんに聞いた。
■本日お話を伺う企業さま
株式会社INQ 代表取締役CEO
若林哲平
1980年 東京都清瀬市生まれ、神奈川県相模原市出身。青山学院大学経営学部卒。融資サポートを中心に、様々な領域のスタートアップのシード期の資金調達を支援。 年間130件超、10億以上の調達を支援するチームの統括責任者であり、行政書士法人INQ 代表も務める行政書士/認定支援機関でもある。 複数のスタートアップの社外CFOも務め、業界への理解が深く、デットだけでなくエクイティ両面の調達に明るく、対応がスムーズだとVCやエンジェル投資家からの信頼も厚い。 趣味はキャンプと音楽。4児の父。
想いを汲み取る。その先に目指す、「スタートアップ×融資といえばINQ」
INQは創業期や創業準備期のスタートアップを対象に、融資や補助金による資金調達の支援を手掛けるベンチャー企業だ。年間の支援件数は約200件に上る。
成長の背景には、スタートアップのファイナンスを取り巻く環境の変化がある。
銀行による融資や補助金枠の増加に伴い、エクイティだけではなくデットでの調達も目指す起業家が増えているのだ。
とはいえ、スタートアップと銀行の間には、現場レベルではまだまだ温度差が存在するのも事実。
そうした状況において、INQは資金調達を目指す起業家に銀行の思考を先回りして伝えることにより、融資や補助金の獲得可能性を高める役割を果たしている。
INQのようなビジネスを手掛けるプレーヤーは、今も市場に大量に存在するわけではない。
もともとスタートアップと銀行の相性は決して良くはなかったからだ。
しかし、時代の変化とともに両者の架け橋となるポジションが求められるようになり、若林さんはこの新しい分野で、「スタートアップ×融資といえばINQ」と認知されるようなニッチトップを目指している。
若林さんが考えるINQの強みとは。その一つは、彼らが起業家と向き合う姿勢にある。
「スタートアップの経営者は、世の中に新しい価値を生み出そうとしている『独立独歩』の人たちです。意志の強さや頭の回転の速さは突出していますが、必ずしも第三者にわかりやすい説明ができる人ばかりではありません。僕らの強みは、そうした起業家の想いや事情をしっかりと理解した上で、最適な手法を提案する『汲み取り力』にあると考えています」
一人ひとりの起業家に真剣に向き合う姿勢は、「興す人を、成す人に。」というINQのビジョンにも現れている。
「『興す人』とは、自分や世の中にとって新しいことを始めようとしている起業家のことです。我々のクライアントは企業ですが、実際に向き合うのは個人です。『志を持って起業した人たちの成功や成長を支えたい』という想いが、このビジョンには込められています」

“専業主夫”生活で味わった、社会からの疎外感
若林さんがINQを設立したのは2018年。36歳のときだ。
25歳まではミュージシャンを目指し、ひたすら音楽活動に打ち込んでいた。
残念ながら自ら設定した期限までに音楽を仕事にする夢は叶わず、“一発逆転”に向けて行政書士の資格取得を目指そうと決めた。
受験勉強中はNPO法人の仕事をしていたものの、第一子の誕生をきっかけに退職。
その後「専業主夫 兼 受験生」として過ごした一年間は、若林さんの価値観に大きな影響を与えた。
「初めての育児は大変でしたね。子どもが思い通りにならないから勉強も思い通りにできず、メンタルはかなり追い込まれていました。何より辛かったのは、子ども以外の誰とも会う機会がなくなってしまったこと。社会から取り残されたような疎外感を味わい、『出産でキャリアが断絶して悩んでいる女性は、きっとこんな気持ちなのだろうな』などと考えていました」
しかし、若林さんは2008年の行政書士試験に見事合格する。
苦しい時期を乗り越えて、ついに“一発逆転”の切符を手に入れたのだ。
「晴れて社会に出ることが決まったときは、めちゃくちゃ嬉しかったです。今までの生活の反動で、『人の役に立てるのはなんて素晴らしいことなんだ!』と思いました。あのとき感じたモチベーションが、今もずっと続いている感じです」
若林さんの「人の役に立ちたい」という想いは、いつしか「起業家を支援したい」という具体的な目標に変化していく。
INQの前身となる行政書士法人でスタートアップの創業融資の支援をするうちに、起業家という人間が持つ魅力に深く魅せられてしまったのだ。
「起業家の皆さんは、何より人間性が素晴らしいんです。優秀で、個性的で、前向きで。創業期にご支援した起業家がたった数年でビッグになり、TVCMを打っているのを知ったときは『この人たちは本当に社会を変えてくれるんだ』と実感する瞬間です。そんな素晴らしい人たちを支援できるのは、この仕事最大の醍醐味です」
この人たちは本当に社会を変えてくれる──。
この言葉には特別な想いが込められているように感じられた。
若林さんの4人の子どもたちが大人になったとき、日本を支えているのは、今目の前にいる起業家たちなのかもしれないのだから。
大切な子どもたちに、素晴らしい未来を渡したい。
そんな個人的な想いも、若林さんが起業家たちと真剣に向き合っている理由の一つなのだろう。

仕事以外でも活躍し、責任も果たす。
自律した人が集まる場所
INQには若林さんを含む4人のコアメンバーが在籍しており、マーケティング業務やバックオフィス業務を担当する外部委託メンバーを含めた約10人のチームで活動している。
中でも独自のワークライフバランスを実現しているのが、社員で現役ミュージシャンの武田信幸さんだ。

株式会社INQ 武田 信幸さん
スタートアップの融資や補助金等による資金調達の専門家とミュージシャンのパラレルワーカー
武田さんはインストロックバンド「LITE」のギタリストであり、映画音楽の制作やFUJI ROCKへ出演など、精力的に音楽活動を行っている。
コロナ禍前は毎年世界ツアーを開催していたため、ミーティングにはライブ先から参加することもあった。
多忙な生活でありながら、INQでは着実に売り上げを出し続けているのだという。
同じく社員の片岡優也さんも、仕事とプライベートを両立して働いている社員の一人だ。
3歳の子どもの子育てと資格試験の勉強を両立しながら、INQのエースとして活躍している。
こうした自由な働き方を実現できている背景には、フルフレックス・フルリモートの制度に加え、自分のペースで仕事を進めやすいINQならではの環境がある。
業務の過程で分業がほとんど発生しないため、クライアントの事情さえ考慮すれば時間の使い方を自由に決められるのだ。
独立心が強く、個人事業主的なマインドを持つ人がINQに集まっているのは、そうしたカルチャーの影響が大きいと若林さんは捉えている。
「一人でもやっていける人が、なぜINQに所属しているのか。それは『ここでしか得られないやりがい』と『貢献に報いる仕組み』があるからだと考えています。当社はニッチなポジションにいるからこそ、他ではなかなか出会えない起業家に出会えますし、頑張った分だけハッピーになれる給与体系もある。今いる社員が頑張ってくれているのは、そうした理由からだと思います」
「親になっても成長し続けたい」。ワーキングペアレンツも大歓迎
一緒に働く仲間に求めるもの。それは先述した「汲み取り力」の一点に尽きるという。
「『汲み取り力』は、意図が異なるプレイヤーの間でマッチングが成功するように調整する業務経験で培われるケースが多いかもしれません。例えば当社の片岡は、前職では人材派遣業の営業職として求職者と企業の間でコミュニケーションをする立場にいました。彼は一つのペルソナですが、過去の業務経験は基本的には問いません。カルチャーやスキルのマッチを最優先に考えています」
もちろんwithworkが支援しているワーキングペアレンツも大歓迎だ。若林さんは「子どもを育てながら働いている人は、やっぱり『とりなし力』やメンタル耐性が長けている気がします(笑)」と話しつつ、一つだけ求めるものがあると続けた。
「『子どもが生まれたから自分はもうチャレンジできない』というような保守的な考えを持つ人だと、当社は少し合わないかもしれません。子どもが生まれた後も変わらず成長意欲があり、自分を変えることに対する柔軟性もある。けれども、今までの職場ではそうした価値観で働き続けられなかったという人は、きっと当社にぴったりです。ぜひ興味を持って応募していただければと思います」
子どもが産まれた後も成長し続けたい。その強い意志は、若林さんの中にもずっとあるものなのだろう。
経営者として、父として。自分の人生を生き続ける若林さんは、社会をより良い場所に変えていく新たな仲間を求めている。

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