(※2025年3月9日と13日放送の「#キャラトラ(前編、後編)を記事化したものです。)
こんにちは!ワーキングペアレンツのための転職サービス『withwork』です。
現在進行形で企業経営に携わる、 XTalent代表・上原達也とXTalentアドバイザー・田中優子が、 男女やケア責任のありなしに関わらず、誰もが活躍できる組織運営について雑談していきます。
今回のテーマは、「20代女性が抱えるキャリアと出産にまつわる悩み」について。
出産後のキャリアに不安を感じる女性たち
上原:
今回は、20代女性の「キャリアの悩み」と「子育によるキャリアへの影響」をテーマにお話をしていきたいと思います。最近、意識的に20代の方とお話する機会を持つようにしているのですが、その中で、とくに女性とお話をしていると、「出産したらキャリアが断絶する気がして、不安です…」といったお声をよくいただきます。
田中:
私も最近そういう話を20代〜30代前半くらいの方からよく聞きますね。最初、「え?いつの時代の話?」と不思議な感じがしたのですが、よくよく話を聞いてみると深刻に悩んでいたりするので、こういった悩みを抱えている女性はまだまだ多いんでしょうね。
上原:
僕たちはwithworkという事業を通して、様々なバックグラウンドを持った方たちが転職して活躍しているシーンをたくさん見ていますし、ワーキングペアレンツの当事者としてこれまでの成功体験があります。だからこそ、「それでもまだそう思わせちゃってるんだ…」ということに、すごく課題意識を持ちます。
話をしていて感じたのは、キャリアというものを「とにかく時間を投下してバリバリ働くこと」もしくは「時間に制約があるからセーブせざるを得ない」の二択で捉えているということでした。
あとは、言葉にはしていませんが、「子どもが生まれてからのキャリアの制約は全て女性が負うもの」というイメージを持ってしまっているのかなと感じました。
田中:
最近、私が社外役員をやっている会社の方で、初めて妊娠をされた31歳くらいの女性と話す機会がありました。彼女は、「もうとにかく不安です…。今産んで良いのでしょうか?」と、すごく不安になっていました。私は、「全然心配することないよ。」と返しつつ、「具体的にどんなことに不安を感じているの?」と聞いてみたんです。そうすると、「今まではあまり制約がなく、仕事をどこまででもやれました。でも、それができなくなってしまうと、自分は役に立たなくなるのではないか。今までのような価値が出せなくなるのではないか。そんな不安でいっぱいです」と話してくれました。
その方以外にも、いろんな方の話を聞いていく中で「不思議だな」と思ったのは、「休んではいけない」と思っている人が多いことです。
男性はもちろん、女性も「子どもを産まない」という選択をした人は、ずっと走り続けてどんどんキャリアアップしています。そういった人が周りには多くて、自分が出産とか育児によって仕事をセーブすると、昇進のタイミングとかを失うのではないかと感じている人が多いんだなと思いました。
でも、実はこれらの不安は全然根拠がないものなんです。よくよく聞いてみると、「なんとなく周りにそういった人が多くて、自分が遅れを取るような気持ちになる」という話が多いんですよね。
上原:
たしかに同期で入社した男性に比べると、「出産して育休を取った自分はすごく遅れを取っている」みたいな話は、これまでも多くあったと思うんですよね。そういった状態になるということを、結婚・出産前からなんとなく見たり聞いたりしているから、「自分もそうなるのが怖い」と思うようになってしまうのでしょうか。
年次や序列が気になるのはなぜか?
田中:
でも、彼女が働いてる会社の場合、出産や育児のせいで差が出るかと言ったら、別に出産や育児が原因で遅れを取ることはおそらくないと思うんですよね。実際に出産や育児をしていても、活躍していらっしゃる方も多くいらっしゃるんです。本当は関係ないはずなのに、そういう風に不安になってしまう原因は他にもあると思っていて。新卒でよーいドン!という環境だから感じる価値観なのかもしれません。
今は転職が当たり前になっていて、従業員の大半が中途の人という職場もありますよね。そういった職場は、いろんなキャリアの人がいて、誰が誰より年次が上とか下とか、そういうのがあまり気にならない環境なんじゃないかと思います。
そもそもこの年次という概念が「何だ?」といった話だとは思うのですが…。新卒だと入社年次が上下関係にすごく影響しているケースもありますよね。そういった環境だと「同期よりも出世が遅れた」とか「後輩に抜かされた」とか、そういうことが気になってしまっても仕方ないのかなと。
結婚・出産までの期間にすごく仕事を頑張ってきた方、とくに、競争に対して精一杯やってきた女性は、そういうふうに感じてしまう方が多いのだろうと思います。ある種、勉強でも仕事でも、男女関わらず頑張ってやってきたような人が、初めて「女性としての何かを意識する」「ネガティブな感情を抱く」タイミングなのかもしれません。
自分のキャリアの足かせになるようなものを、初めてそこで意識して怯えているという印象を受けます。私は、そこまで心配しなくても大丈夫だと思うのですが…。
上原:
僕も総じて、「いや、そんなに心配しなくても結構なんとかなる」と思っています。同じ状況でも、活躍している方やちゃんとキャリアアップしている方がたくさんいらっしゃいますよね。
例えば、すごく昭和なカルチャーで、「育児している女性=サポート役」みたいな決めつけをしてくるような会社も、少なからず世の中にはあるので、そこで悩むのならまだ分かるんです。
でも、田中さんもお話していたように、「え?その会社でそんな悩み持つ必要あるのかな?」という人が意外と悩んでる事象は、僕もたしかに目にしますね。
田中:
そうなんですよ。だから恐れなくても良いのにと思うのでが、不安になってしまう原因が何かしらあるのでしょうね。
SNSや周囲の声が不安を増幅させている
上原:
その人が身を置いている環境がそうさせているのでしょうか。本人の中での自己認知だったり、もしくは、ステレオタイプ的に「子どもが生まれた女性は、きっとこうなるんだ」みたいなイメージを知らず知らずのうちに持ってしまっているとか…。
田中:
子どもがいる方に実態を詳しく聞く機会があまりないという方もいらっしゃるかもしれません。もしくは、「育児は大変なのよ」と言う方が周りに多くいらっしゃるとか。そうすると、ただただ大変そうなイメージが定着してしまう。
上原:
たしかに、そういったケースもあるかもしれませんね。例えば、SNSで子育ての苦労話や旦那に対する不満をつぶやいている投稿もちらほらと見かけます。そういったネガティブな話がリアルよりも増幅しやすいのは、ロジックとして明確にあると思います。無意識のうちにそういった価値観や意見の影響を受けているのかもしれないですね。
田中:
いざパートナーと、「子どもが生まれたらどうするのか?」という話をちゃんとしたことがあるのかと聞いてみると、「それはあまりない」と応える方が多いんですよね。実は自分1人で悩んでいたり、同世代と話して、ただただ不安になっているだけだったりする。
もし上原さんが、妊娠・出産を検討している方から「やっぱり難しいのでしょうか?」と聞かれたら、どのようにコミュニケーションしますか?
上原:
実際の事例を出しながらお話をしてみますかね。withworkで転職支援している方には、様々なバックグラウンドの方がいらっしゃいます。なので例えば、「育休に入ってから転職し、最初は〇〇な大変さもあったけど、今はこういう風に乗り越えてすごく活躍している。そのような方が、これだけ多くいらっしゃいますよ」といったことを、事実として率直にお伝えすると思います。
田中:
悩みや不安を抱えてしまっている方の多くは、実際の事例に触れること自体があまりないのかもしれないですよね。先ほどおっしゃったみたいに、SNSでは苦労話の方が拡散しやすいから、なんとなくそこに影響を受け、必要のない不安を持ってしまっているのかもしれません。
上原:
様々な事例があることを知らないから、見えない不安として自分の中のステレオタイプで考えてしまうというのも、もちろんあると思います。
あとは、先ほど田中さんがおっしゃっていた「バリバリ働いて誰よりも頑張って成果を出してきたんだ」と自分の成功体験があり、でもそれが出産・子育てをきっかけにできなくなるという不安を感じている方は、以前のように働けなくなった自分が「成果を出している」「人から認められている」「貢献できてる」というイメージを持ちづらいのかなとも思います。
田中:
長時間労働でしかバリューを出せないと思いこんでいるケースもあるかもしれません。たくさん働いたり無理をすることが、働く自分自身の価値の1つだとどこかで思っている。でも、「そうではない価値の出し方もある」といった事例が、もしかしたらそんなに見えていないのかもしれないですね。
上原:
こういった不安を抱えている方こそ、すごくハードワークをこなしていて、向上心の高い方が多いと思います。だからこそ、出産前後のギャップが怖いというのはありそうですね。
夫が感じていた「仕事に全振りできなくなったこと」への罪悪感
田中:
少し視点が違うかもしれませんが、最近私の夫は在宅勤務が多いんです。それはもちろん本人が望んで選んでいることで、会社としてもそれを良しとしてくれています。実際にそういった選択をしている社員さんもたくさんいらっしゃる会社でもあるんです。
ただ、先日夫がこんなことを話していました。
「在宅勤務をする中で、自分は家庭のこともやっている。もちろん仕事だって手を抜かずにやっている。でも、子どもがいなかった頃の自分と比較したとき『本当にこれで良いのかな?』という気持ちになることがある。」と。
ただ、私が「じゃあ前みたいに働きたいの?」と聞くと、「いや、そういうわけじゃない」とのことでした。
さらに話を聞いていくと、「仕事ができていないとは思わない。でも、今の状態が『精一杯頑張っている』とは思えないことがある。『パフォーマンスを出すこと』が重要ではなく、『頑張っていることが大事』とどこかで思ってしまっているんだろうな。」と言っていました。
「頑張っている」のイメージが、「長時間労働をしている」「遅い時間まで働いている」「会社のためにマインドを割いている」になってしまっていて、「家庭のことをやっているのは、仕事を犠牲にしている」と感じてしまう自分が心の何処かにいるようです。
これらのイメージは、とくに20代の頃に無意識のうちに刷り込まれてしまった意識で、このイメージがあるからきっと良心の呵責に苛まれてしまうのでしょうね。子どもができて仕事に全振りできなくなってしまうことへの不安が罪悪感につながっているのかなと、夫の話を聞いていて感じました。
「そんな風に思う必要なんてないし、だからといって別に独身の頃に戻りたいわけでもないんだけど、その意識があるから昔の自分と比較して『頑張れていないかも…』と思ってしまうことがあるのかもね。」と夫は言っていましたね。
上原:
田中さんのパートナーさんも、そんな風に感じたことがあるんですね。もしかしたら、仕事に対して全振りできなくなることに不安を感じているのは女性ばかりではないのかもしれません。
キャリアと出産の“ちょうど良いタイミング”と葛藤
上原:
田中さんご自身のお話も伺いたいのですが、田中さんも元々ハードワークをされていた時期があり、スタートアップ企業に入社し、そこで出産をされてから色々な変遷があったかと思います。その中での不安や、実際にお子さんが生まれてからキャリアに断絶を感じたなど、そういった経験はありましたか。
田中:
それが私、本当に全然ないんです。だから、本当はそういった悩みを抱えている方に寄り添いたいなと思いつつ、「全く分からん。なんでそんなこと思うんだろう?」って心の中で思ってしまって…。
ただそう思うのは、私は41歳で出産したので、自分のキャリアやポジションが「一定のところまでやった」という感覚があったからかもしれません。
取締役になったのは子どもを産んでからだったので、出産後も仕事のウェイトを緩めた感じはあまりなかったんですけどね。
出産前も、「たくさん働かなきゃ」と思っていたわけではないんです。ただ、「時間を意識せず働いていた」というだけでした。だから、出産前はたしかにハードワークをしていましたが、そういった働き方ができていることが自分の価値だとも思っていなくて。ただ、時間を気にせず働けていたというだけかもしれません。
でも、出産後はどうしても時間的制約があるから、「この時間以降は働けないな。その分の時間をどこかで確保せねば」「無駄なことはしないようにしよう」など、そういった意識を持つようになりました。
例えば、ミーティングをする時も、「夜のこの時間帯は無理です」って伝えて調整するようになりました。その結果、自分のアウトプットにマイナスがあったとは思わないし、人からどう思われるかもあまり気にしていませんでした。「人からの目線を気にしないフェーズに自分が来てた」というのもあるかもしれません。
そう考えると、30歳前後ぐらいで「キャリアと育児の両立はできるのか」「今出産したら人からどう思われるのか」「出産によって自分の価値が出せなくなるかもしれない」と不安になったり、悩んだりしている方と同じ気持ちになっていたかもしれないなと思います。
上原:
キャリアステージとライフステージのちょうど良いタイミングや、それぞれの兼ね合いみたいなものは、たしかにありそうですね。キャリアステージは上がりきっていないけど、ライフステージとしては子どもができて、その時に生じる葛藤とか。
「誰かが言った正しさ」を意識しすぎるとしんどくなる
田中:
あとは、どこまで家事や育児を割り切るかということも、すごく重要だと思います。
「女性が全部をやらなければいけない」という先入観の中で捉えると、例えば「子どもの食事は全部手作りにしましょう」「毎日17時に迎えに行きましょう」「そもそも保育園に預けるのは母親としてなっとらん」など。
「誰かが言った正しさ」みたいなものを、自分自身が「そうしなければいけないんだ」と強く意識してしまうと、正直それは制約が多すぎてしんどくなってしまうと思います。そして、その意識が「キャリアを優先することに対する罪悪感」にもつながってしまうのではないでしょうか。家事と育児の両立を無理やりなんとかすることはできたとしても、無理をしている間はきっと、罪悪感は消えてくれないと思うんです。
最初は良くても、だんだんと仕事をしている時間は子どもに対して申し訳ない気持ちになり、育児をしている間は会社に対して申し訳ない気持ちになる。だから、思い切って開き直っちゃえば良いのにと思うんですが、なかなか開き直れない「何か」が本人にはあるのでしょうね。
例えば、「パートナーがどこまで一緒にやってくれるのか」という問題。自分はうまくバランスを取っていきたいと思ってるけど、パートナーが全く手伝ってくれないという方もいるでしょうから、現実問題難しいですよね。
上原:
今ちょうど例が出た、パートナーの協力が得られるのかどうかという問題について掘り下げてみると、ご家庭によって様々なケースがあるとは思いますが、大きく2つに分けられるのではないかと感じています。
1つ目は、田中さんがおっしゃったような「話をしたけど、全然協力的じゃない」もしくは「話が通じない」というケース。もう1つは、話してみたら意外と「いいじゃん、いいじゃん!協力してやっていこうよ!」となるのに、そもそも話ができていないというケースですね。
前者の場合は、解決まで時間がかかるかもしれませんが、後者であれば話し合いで解決ができるかもしれないですよね。
前者も、できれば話し合いで解決できたら良いですけど、話し合った上でそういう状況なんだと分かれば、解決するために外部の力を借りるという手も選択肢として考えられると良いと思います。
いずれにせよ、1人で全部をなんとかしようとしすぎずに解決する方法を見つけてもらえたら良いですね。
なぜ留学したら「キャリアアップ」なのに、子育てしたら「キャリアが断絶」と言われるのか
上原:
その他にも、田中さんがおっしゃった「開き直れない理由」は、人によってさまざまではあると思いますが、解決策の1つとして社会全体の意識を変えていく必要があるんじゃないかと感じています。
冒頭でもお話しましたが、今回の出産後のキャリアについての話は、僕のXでも投稿していて、その投稿を株式会社エールの取締役されてる篠田 真貴子さんが引用してコメントしてくださったんですね。いただいたコメントを要約すると「子育てをすることによってマネジメント経験はすごく上がりますよ」という内容でした。
子どもを育てるという不確実な状態の中で、命を守らなければいけないプレッシャーも感じながら、自分のリソースも鑑みてどうやってやりくりしていくのか。とにかく考えて意思決定することが毎日たくさんある。
これはもうマネジメントの仕事に通じるものであり、これをもっと会社として評価するような経験や仕組みにできないかということを話されていました。
田中:
極端な例かもしれないですけど、「留学したらキャリアアップなのに、子育てしたらキャリアが断絶と言われるはなぜ?」と思います。どちらも仕事から一定期間離れているという意味では同じですよね。でも、留学の場合は、年収アップや社内でポジションが上がったり、良い会社に転職できたりと、ステップアップにつながるケースもありますよね。なのに、どうしてこれが子育てだとマイナスになってしまうのでしょうか。
たしかに過ごした過程で得るものは違うかもしれません。しかし、留学でも子育てでも「何かに打ち込んだ」という意味では同じではないかと思います。
上原:
パートナーの駐在に帯同した方が日本に戻ってきてから転職活動するケースもよく聞くのですが、そういう方のエピソードを聞くと結構発見があるんです。人によっては、駐在している人同士のコミュニティの中だけでしか生活がないケースもありますし、 ビザの関係でなかなかお金をもらって働くことができないケースもあるみたいなんです。ただその代わりに、「ボランティアをしていました」「コミュニティを作っていました」など、制限がある中でも様々なことに挑戦したり実際に結果を残していた話を聞くことがあります。その人自身が持っている「変化への適応力」の表れなんだと思うんですよね。ガラッと環境が変わっても、その中で人間関係を作ったり何かの取り組みを指導したりすることは、転職に置き換えて考えると新しい環境に飛び込んでパフォーマンスを上げようとすることとすごく重なると感じています。
そういった変化への適応力を持っている方は、これまで大手企業一社でしか働いたことがないけど、全然違うフェーズのスタートアップに飛び込んだとしても適応して活躍できていることが多いんです。
ブランクは本当に“悪”なのか?
田中:
実際に、しばらく専業主婦期間があった方やパートナーの駐在に帯同していた方が、復帰後にものすごく活躍されて企業の役員になられたという事例もありますよね。そういった方は、いわゆる断絶と言われる期間を過ごしていたなんて感じさせない方が多い気がしています。きっとご自身が仕事から離れていた期間も、新しく何かを身につけたりと、時間を無駄にしない努力をされてこられたんだろうと思います。
そういった事例はたしかにあるということを前提に、そもそもの話になるのですが、「なぜブランクがあったらいけないんだろう?」と疑問に思います。ブランクと言われる期間、放浪の旅に出ていようがニートをしていようが、別に関係なくないですか。会社から離れている期間があるなら、何かを身につけなければいけないんだということさえ違うというか…。すごく先入観を持ってしまっているのではと感じます。
実際、働いた年数だけがその方の能力やパフォーマンスに影響するかというとそうじゃないですよね。10代でも20代でもすごい方はいるじゃないですが。学生起業している方もたくさんいますよね。入社1年目だろうが、数年間のブランクがあろうが、その方自身が成果を出せるかどうかに直接的な関係はないのではないでしょうか。たしかに、継続することも大切だと思います。でも、絶対に継続しなければいけないのかというとそうではないと私は思っています。
上原:
キャリアというものが、「ずっと上りの階段を上がり続けていかねばならない」といった思い込みはたしかにありますよね。
田中:
「50歳まで継続して働いたから、キャリアが30年あります」ということよりも、その人自身の能力や意欲、キャリアとかビジネスに対する姿勢、あるいは実際にアクションできたかという行動力だったり、そういったものの方がより重要なはずです。
「会社を離れていた期間=キャリアの断絶」ということ自体が、自身を誰かが作った1つの枠組みやレースに乗せてしまっている感じがします。
1人の完璧な存在より、いくつもの“参考になる部分”を
上原:
1回でもキャリアの断絶を経験してみて、「まあいいか」と思えるようになった方は強いと思います。「まあいいか」と思えるようになるまで恐れや不安と、どう向き合って乗り越えていくかということなんでしょうね。そういった経験は、誰かのインタビュー記事を見るだけでは、なかなか気づきにくいかもしれませんね。
田中:
そういった記事を読んでも、「自分とは違うから」「自分の周りにはそんな人はいない」と思ってしまうのかもしれませんね。実際にロールモデルがいない問題もよく聞きます。本当はいっぱいいるんですけどね…。どのくらいロールモデルがいたら足りるのでしょうか。
上原:
1人のよりも、いろんなケーススタディとしてたくさんの方の事例を見ながら、「自分はこの要素とこの要素を取り入れてみよう」と、ピックアップしてみるのも良いですよね。自分とまったく同じ人はいないかもしれませんが、似たような立場の方の経験を参考に自分だけのロールモデルを作れたら良いと思います。
田中:
実際に、10~20年前と比較してみると、働きやすくなっていますし、常に環境は良くなっていると思うんですよね。なので、さらに10年後は今よりももっと良くなっているはずなんです。なぜ良くなるかと言うと、今悩んでる人たちが恐れずに挑戦した結果、「意外と大丈夫だ」みたいな事例が増えていくので、それがスランダードになっていくからだと思うんです。
逆に言えば、これだけ不安に感じている人が増えているというのは、「家事や育児とキャリアを何とか両立しよう」ともがいてる方が、10~20年前よりも増えた証拠でもあるかもしれません。一昔前は、「大変になる前に諦める人」や「仕事か家庭のどちらかしか選択しない人」が多かったように思います。でも今は、「両立させよう」「何とか頑張ろう」という時代になってきています。だから、その大変さが以前よりも見えるようになってきているということなのかもしれませんね。
上原:
見えるが故に、「自分はどうしよう」と悩んでしまうのかもしれませんね。でも、「なんとかなるよ」ということを、もっとみなさんに伝えていきたいですね。
田中:
諦めないでほしいですよね。
上原:
本当になんとかなると思うし、僕たちも「なんとかなるんだ!」と思ってもらえるような環境や事例をたくさん作って、今後も発信していきたいと思っています。