2025.11.4

「テクノロジーで人類の孤独を解消する」分身ロボットから広がる、インパクトスタートアップの組織づくり【オリィ研究所】

#「働きがい×働きやすさのある企業インタビュー
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ライフもワークも、イキイキとした自分でありたいーーそう望むビジネスパーソンが増えています。だからこそ、働きやすさだけでなく、働きがいも感じられる職場を求めているという声も多く聞かれるようになりました。

そこで今回は、「働きがい×働きやすさ」の両立を実現している企業へのインタビュー企画として、株式会社オリィ研究所 代表取締役社長 CEOの笹山 正浩さんにお話を伺いました。両立を可能にする組織づくりの秘訣とは?

【インタビュアー:XTalent株式会社 代表取締役 上原 達也】

(※2025年9月時点の取材内容です)

テクノロジーで、人類の孤独を解消する

上原 達也(以下、上原):

はじめに、オリィ研究所の事業内容について教えていただけますか。

笹山 正浩さん(以下、笹山):
当社は「人類の望まない孤独を解消する」を理念に掲げ、テクノロジーで解決することを目指す企業です。

「孤独」というと個人の感情をイメージすると思うのですが、我々は孤独の三要素を「移動ができない」「対話が難しい「社会で役割を得られない」と定義しています。
その背景には、身体障害やメンタル不調、家族の介護といったさまざまな事情があります。
こうした方々が社会で役割をもち、孤独を解消できるよう、遠隔操作型コミュニケーションロボット『OriHime』を開発し、自宅や病院にいながら社会に参画できる仕組みを提供しています。

笹山:

今私たちがいるこの『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』も当社が運営しており、外出することが困難な方々が『OriHime』や『OriHime-D』を遠隔操作して、お客様にサービスを提供しているんです。

社会で役割をもつとなると、企業や自治体などで働くことが想定されますが、その第一歩を踏み出す場として、このカフェがあります。
ここで分身ロボットを用いて社会参画する経験を通して、働くことに対する自信や自己肯定感を育んでもらっています

上原:
さまざまな事情を抱えた方が、社会で価値を発揮できる仕組みをつくっているんですね。オリィ研究所は、どのような経緯で創業したのでしょうか?

笹山: 創業者の吉藤が小学5年生から中学3年生の頃に不登校になった経験から「自分にもう一つの体があれば、行きたい場所へ行けて、会いたい人に会えるのに」と思ったことが創業のきっかけです。

吉藤がこの原体験をもとに、孤独解消を目的とした分身ロボット『OriHime』を開発し、2012年にオリィ研究所を設立しました。

私は、『OriHime』によって人生が変わるインパクトに惹かれて5年前に当社へジョインしました。
当初はCFOとしての役割でしたが、事業も複数になったことから2023年から吉藤と一緒に代表取締役を務めています。

「目指す姿」と「今の仕事」のつながりを見出し、働きがいを育む

上原:
現在の社員数を教えてください。また、どのような方が多く在籍していますか?

笹山: 正社員は約30名です。
さらに当社ならではの特徴として、分身ロボットカフェで働いた方のうち5名が、契約社員や業務委託メンバーになっています。

(※分身ロボットカフェなど、OriHimeで働く仲間を「OriHimeパイロット」と呼んでいます)

それぞれの社員が、当社の理念や事業へ共感するエピソードをもっていることも特徴ですね。私もその一人です。
孤独という社会課題に向き合い、静かな情熱を秘めながら他者の活躍を支える「隠れプロデューサー」気質の人が多く集まっていると感じています。

上原:
オリィ研究所のようなインパクトスタートアップにおいて、理念へ共感する仲間が集まっていることは大きな強みになると思います。普段はどのような働き方をしていますか?

笹山:
オンラインとオフラインを交えたハイブリッド型の勤務形態です。
チャットツールやビデオ会議ツールなどをオンラインで活用するとともに、週1回の出社日を設けています。

オフラインはメンバーの人となりや組織の雰囲気といった非言語情報を得られるメリットがあるので、出社日は社員とランチをとったり、雑談したりすることを推奨しています。
一緒に仕事をする仲間を信頼するには、業務内容だけでなく趣味などの話もしてお互いを知ることが必要だと思うからです。

また、フルフレックス制度を採用し、社員が望むワークスタイルをできる限り認めています
仕事とプライベートを両立させやすい働き方なので、子育て中の社員も多く活躍中です。
そのぶん、一人ひとりに自律的な行動が求められる会社ではあると思います。

上原:
柔軟な働き方ができる仕組みや制度を取り入れて、働きやすさを実現してきたのですね。

笹山:
そうですね。実は、このワークスタイルを確立するにあたり、『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』で働いているOriHimeパイロットからも影響を受けました。
自分の体調に合わせて1時間ごとに休憩をとるなど、一人ひとりの事情に応じた働き方をしているんです。
こうした様子を目の当たりにし、我々社員も「いろいろな働き方ができるんだ」と気づきをもらっています。

上原:
その中で、社員の働きがいはどう育んでいるのでしょうか?

笹山:
「自分たちが目指す姿」と「今の仕事」とのつながりに腹落ちすることが働きがいにつながると考え、定期的に確認するための施策を行っています。
たとえば、先日は全社員でオフサイトミーティングを開催し、自分たちの価値観の振り返りを行いました。

目標設定と人事評価は、半期ごとのペースで行っています。 6ヵ月に一度というサイクルは短いかもしれませんが、目指す姿に対する認識の齟齬が生まれないようにしているのです。
こうした営みによって、「人類の孤独を解消する」ことに自分の仕事がどう役立っているのかを実感できると考えています。

また、社内情報は、人事情報を除いてほぼすべて開示しています。
情報が見えないと、詮索や無駄なコミュニケーションをしがちになるものです。
こうした行動を社員にさせたくないという思いのもと、透明性を重視した経営をしています。

上原:
今の組織づくりに至るまでに、ぶつかった壁はありましたか?

笹山:
当社のようなインパクトスタートアップでは、経済的価値と社会的価値のバランスをどう取るのか、全員で認識を合わせることが重要です。
この点も、働きがいの醸成に欠かせないと考えています。

かつて、社員間でこの認識が揃わず、ひとつの投資をするにしても「経営陣は、儲けることしか考えていないのではないか」などと誤解が生じることがありました。
お互いの信頼関係を思うように育めなかったのです。

こうした経験があったため、経営としては社員と対話することを大切にしています
当社が唯一無二の存在であるのは、コミュニケーションテクノロジーによって孤独を解消するという思想です。
この存在意義をぶらさず、経済的価値だけを追い求めすぎない経営判断をし、丁寧なコミュニケーションをすることを意識しています。

社員一人ひとりが、自社の提供価値を発信する存在に

上原:
現在までの組織づくりの成果をどう捉えていますか?

笹山:
5年ほど前までは、創業者である吉藤が社外にメッセージを発信するのが中心でしたが、メンバーが少しずつ増え、一人ひとりが発信者になりつつあります
また、OriHimeパイロットの発信量も増えてきており、この変化は、当社がさらに前進する大きなパワーとなっています。


理念に共感する社員を採用し、働きやすさと働きがいを両立する組織づくりをしてきた効果も出てきており、離職率は低い傾向にあります。
ただ、離職率だけで組織の健全さを判断すべきではないとも考えています。
会社のスタイルが変われば、社員に求める要件も変化するので、退職者が出るのは自然なことだからです。

上原:
なるほど。組織の新陳代謝が起きるのを当たり前だと考えるのは、発展途上にあるスタートアップならではの観点ですね。

最後に、これからオリィ研究所がチャレンジしたいことをお聞かせください。

笹山:
今後も、ロボットを開発して販売するだけには留まりません。
さまざまな事情を抱えた人が社会で役割をもつ第一歩となる場所をつくり、さらに企業や自治体などで就労機会を得るステップを増やしていきたいと考えています。

孤独という課題は、障害がある人、介護などプライベートの事情で外出しにくい人、メンタルに不安がある人など、さまざまな人が抱えているものです。
そして、将来はすべての人に寝たきりの生活が待っています。
こうした孤独に悩む方々から、「オリィ研究所なら相談できるかもしれない」と思ってもらえる存在になりたいと思います。

そのために、当社のサービスをより多くの人へ届けるとともに、他業界とも連携していくことを考えています。
「人間の役割」とは何か、何を残すべきかに今一度向き合い、社会全体で孤独を解消するムーブメントを起こしたいと考えています。

上原:
目指す姿を実現するにあたって、どのような仲間が必要だと考えていますか?

笹山:
孤独を抱えた原体験をもつ人はもちろん、孤独の解消というテーマをポジティブに捉え直し、ムーブメントをつくっていきたい人とも一緒に働きたいと思っています。

「孤独」というとネガティブな印象がありますが、分身ロボットカフェはネガティブの解消というより、エンターテインメント性にあふれた、皆が楽しめるポジティブな空間です。
こうした場をつくることで、「いつの間にか孤独を解消できていた」というプロセスをふむことが理想だと考えています。
このように、発想をポジティブに転換しながら社会課題を解決したい人には、ぜひ当社で働くことを考えてもらいたいと思います。

▶︎株式会社オリィ研究所のコーポレートサイトは、こちら

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