ライフもワークも、イキイキとした自分でありたいーーそう望むビジネスパーソンが増えています。だからこそ、働きやすさだけでなく、働きがいも感じられる職場を求めているという声も多く聞かれるようになりました。
そこで今回は、「働きがい×働きやすさ」の両立を実現している企業へのインタビュー企画として、株式会社Tellus 代表取締役 山崎秀人さんにお話を伺いました。両立を可能にする組織づくりの秘訣とは?
【インタビュアー:XTalent 取締役 東一 圭祐】
(※2025年10月時点の取材内容です)
宇宙開発からスタートアップへ
東一 圭祐(以下、東一):
山崎さんのファーストキャリアは、JAXAと伺いました。JAXAでの経験から、現在の事業に至るまでの道のりを教えてください。
山崎 秀人さん(以下、山崎):
大学卒業後、いわゆる超氷河期で就職が大変な中、「100年後に残るような仕事がしたい」と、現JAXAに就職しました。そこから20年以上にわたり、宇宙開発に携わってきました。

山崎:
最初は国際部に配属されて、主に欧州宇宙機関(ESA)との調整を担当していました。宇宙開発の世界はビジネスというより「パートナーシップ」が基本です。例えば、衛星1基で数百億円もかかるため、各国が協力して負担を分け合い、取得したデータはシェアするという文化があります。
当時のJAXAでは組織統合があり、3つの組織が合体した「ポスト・マージャー・インテグレーション」に関わりました。3機関統合直後に3つのミッションが連続で失敗してしまい、組織改革の一環として元NASA長官のゴールディンさんの委員会に2年間関わる機会がありました。
若いうちに、アメリカ型のマネジメントやリーダーシップを学べたことは非常に貴重な経験でした。NASAのトップクラスはいわゆるエリートで、朝は早く、意思決定も早い。「これは私の指示で」と責任の所在も明確にする働き方は、調整、調和を大事にする日本ではあまり見られない光景でした。
その後、はやぶさプロジェクトに関わり、留学を経て経済産業省に出向して宇宙産業政策の策定に携わりました。そこで衛星データをもっとオープンにする社会実験のような取り組みを始め、さくらインターネット(=Tellusの親会社)がそれを受注しました。
後に、縁あってさくらインターネットのプロジェクトをお手伝いするようになり、最終的に転職しました。そして、さくらインターネットで4年ほど事業を育てた後、2024年にTellusとして独立しました。

「専門技術が必要な衛星データ」を誰もが使える社会のインフラに
東一:
現在、Tellusではどのようなミッションを実現しようとしているのでしょうか?

山崎:
衛星データは、地上の影響を受けずに安定的にデータを取れるという特徴があります。ただ、これまでは解析に専門技術が必要で「非常に難しいデータ」と言われていました。私たちのミッションは、これを「誰でも使える形にする」ことです。
例えば、災害時には「国際災害チャーター」というフレームワークで被災地の衛星画像を無償提供する仕組みがありますが、逆に衛星データが多すぎて人力では迅速な解析が難しいという課題がありました。そこでAIの力を活用し、誰もが使えるようにしたいと考えています。
東一:
衛星データを使った事業は、どのように進められているのでしょうか?
山崎:
基本的には、衛星を作る方々からデータを預かり、APIを通じて配信するインフラ的なビジネスを行っています。例えば、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」のデータは、環境省様と連携しTellusでAPI化して提供し、デザイン会社と一緒に3Dモデルを作っていただき、国際会議やNHKで活用していただきました。
次のステップとして、大規模言語モデルや地理空間情報のファンデーションモデルを活用したインターフェースの開発に取り組んでいます。会話をしながら必要な情報を取り出すことができるイメージです。
衛星の数はどんどん増えているので、今後は2〜3時間ごとに地球全体の情報がアップデートされる時代がやってきます。そのデータ量は膨大なので、AIのような新規技術を活用して必要な情報だけを抽出できるようにすることが重要です。
東一:
そもそもこの事業に挑戦しようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?
山崎:
2009年頃だったと思いますが、上司から「クラウドの衝撃」という本を渡されたのがきっかけです。当時、災害時の衛星データ活用プロジェクトを担当していましたが、データが重すぎてタイムリーな解析が難しいという課題がありました。
クラウドコンピューティングを活用すれば、データをシームレスに使える可能性を感じました。当時はまだ技術的に難しい部分もありましたが、ブロードバンドの普及とともにクラウドが当たり前の時代になり、再チャレンジしたいと思いました。そして2017年に経済産業省の支援を受けて、Tellusの前身となるプロジェクトを始めることができました。
目指すは、遊び心のあるプロフェッショナルチーム
東一:
組織づくりにおいて大切にしていることはありますか?
山崎:
Tellusは親会社であるさくらインターネットからカーブアウトした会社なので、良い部分は積極的に真似しようと思っています。例えば、社員には性善説で接するところとかです。Tellusでは特に「信頼と挑戦」を大事にしています。働き方はフルリモートで自由ですが、みんなプロフェッショナルとしてアウトプットを出してくれる。そうした信頼関係を基本にしています。
また、新しいイノベーションは余裕のある発想から生まれると思います。タスクや数字へのコミットは民間企業として必要ですが、それだけでは辛い。時には本業のド真ん中ではないイベントに参加してみたりと、“遊び心”も必要だと考えています。そういった余裕のある組織カルチャーを作っていきたいですね。

東一:
具体的な制度や仕組みはありますか?
山崎:
フルリモート・フルフレックスを基本にしています。小さなお子さんがいる方もいるので、送り迎えなどは自由にしていただいています。一方で、リアルで集まった方が力を発揮できる人もいるので、ワーキングスペースも用意しています。
トラディショナルな会社のような固定的なルールではなく、社員自身が選択肢を持てるようにしています。人によってインセンティブは違いますし、得意なスキルセットも違う。ラグビーを例にすると、15のポジションがあってそれぞれ役割が違うように、多様性を認めながら目標は一緒にする。そんな組織を目指しています。
東一:
Tellusの社員の方々に共通する特徴はありますか?
山崎:
バックグラウンドはバラバラですが、あえて言えば好奇心旺盛な人が多いですね。新しいことをやってみたい、新しいものが好きという人が集まっています。また、女性の割合が非常に高いのも特徴です。
それから、シニアの方々も含めて、モダンな文化を受け入れられる人たちが集まっています。ITバブル期のスタートアップのような「ゴリゴリに頑張る」雰囲気ではなく、お互いにフォローし合える関係性があります。困っている人はいないか声をかけ合うような文化が自然と生まれています。

次世代にインスピレーションを与える仕事をしたい
東一:
以前、山﨑さんのインタビュー記事で拝見した「宇宙産業を日本の基幹産業にしたい」というメッセージが印象的でした。その思いについて教えてください。

山崎:
世界的に情勢が複雑になってきている中で、次世代の人たちが「日本の産業はこれだ」と誇りを持てるものが必要だと思います。先の世代は戦後の焼け野原から復興を成し遂げ、私たちはその恩恵を受けています。同じように、私たちも次の世代のために何かを残す必要があると思います。
私はずっと宇宙に関わってきたので、宇宙産業がその一つの候補になり得ると考えています。「100年後に残るようなものを作りたい」という思いは、小さい頃からありました。
関連して、JAXA時代に印象的なエピソードがあります。はやぶさプロジェクト成功後にNASAのジェット推進研究所(JPL)に訪問したのですが、追跡システムのシニアエンジニアに「なぜ宇宙開発をしているのか」と聞かれました。「子どもの頃に百科事典で見たバイキング探査機の写真に影響を受けた」と答えると、彼女はシニアなエンジニアの方でしたが「私はバイキングのオペレーションもしていたの。あなたのような子が生まれて宇宙開発の仕事に携わることになったのなら、私のミッションは成功ね」と言ってくれました。
次の世代にインスピレーションを与えることが大切だと実感しました。
習得する意欲と好奇心があれば十分。「挑戦したい」という気持ちが大事
東一:
今後の課題や挑戦については、どうお考えですか?
山崎:
事業に関して言えば、競争相手や企業との対話がある中で、自分たちのやり方だけでは勝てません。まだ設立して2年目の会社ですが、もう少し勝負する“筋肉質な組織”になっていく必要があります。
遊び心を持ちながらも、勝負するところではスプリントをかける。そのバランスを取ることは難しいですが、目標達成のためには避けては通れない課題です。
東一:
一緒に働く仲間として、どのような方に来てほしいですか?
山崎:
カーブアウトベンチャーなので「挑戦したい」という気持ちが大事だと思います。宇宙はニッチな分野に思えますが、必ずしも専門知識は必要ありません。習得する意欲と好奇心があれば十分です。実際、社員の半分以上はJAXAや宇宙関連企業以外の経験を持つ方々です。
東一:
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山崎:
次世代の人たちが日本に対して誇りを持てるような産業が、宇宙に限らず必要だと思います。様々な分野で挑戦している方々と一緒に、未来を作っていけたらと思います。

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