ライフもワークも、イキイキとした自分でありたいーーそう望むビジネスパーソンが増えています。だからこそ、働きやすさだけでなく、働きがいも感じられる職場を求めているという声も多く聞かれるようになりました。
そこで今回は、 「働きがい×働きやすさ」の両立を実現している企業へのインタビュー企画として、Ms.Engineer株式会社 代表取締役 やまざき ひとみさんに、お話を伺いました。両立を可能にする組織づくりの秘訣とは?
【インタビュアー:XTalent代表取締役 上原 達也】
(※2026年2月時点の取材内容です)
女性AI・IT人材の育成によって、日本の賃金格差を解消する
上原 達也(以下、上原):
はじめに、Ms.Engineerの事業内容を教えてください。
やまざき ひとみ(以下、やまざき):
当社は「日本の賃金格差を解消する」をビジョンに掲げ、女性が未経験から平均8ヵ月で高いIT・AIスキルを習得できるオンラインプログラム「Ms.Engineerブートキャンプ」を運営しています。経済産業省が提唱する「高度IT人材」レベルのスキルが身に付くプログラムです。
受講時の平均年齢は30代前半で、異業種・未経験からの参加者が多くいます。卒業生の平均年収は484万円で、日本の女性の平均年収より約170万円高い水準です。

上原:
異業種・未経験から「新しい働き方をしたい」と思って通常の転職活動をしても、なかなか実現するものではないと思います。Ms.Engineerでスキルを磨いてキャリアを切り拓けるのは、まさにリスキリングといえるのではないでしょうか。
やまざき:
ありがとうございます。日本の女性は基礎学力が高いにもかかわらず、社会が女性人材を生かしきれず、ジェンダー間の経済格差が生じることは深刻な社会課題です。
当社のプログラムはかなりハードですが、途中で挫折する方はほとんどいません。日本には、優秀な女性が多くいることを感じます。ところが、転職活動をする段階になると「私がIT業界で働けるのだろうか」と自信をもてないケースが多くなるんです。
そこで、インポスター症候群など女性が自身にかけがちなバイアスを取り除く意識教育やキャリア戦略の考え方もプログラムに取り入れ、より多くの女性が活躍することを目指しています。
上原:
スキルを身に付けて望む働き方を叶え、年収もしっかり上げる。人生に対するインパクトがあるプログラムですね。どのようなきっかけで起業したのですか?
やまざき:
私自身が新卒からハードワークを続けた結果、体調を崩してしまった経験に基づいています。当時は「人生100年時代」というキーワードに注目が集まった頃でした。人生の中で何度か立ち止まってスキルアップしたり視野を広げたりする「マルチステージ」という考え方をもつことが、サステナブルな働き方だと痛感したんです。
さらに、コロナ禍での女性の失業率が男性の3倍になり、社会が不安定になると女性にしわ寄せが来てしまうことに衝撃を受けました。一方で、ITエンジニアはコロナ禍でもリモートワークで働けて、賃金も上がっている人が多かったのです。女性の失業者が増えているのに、企業はエンジニア不足に悩んでいる。こうした労働市場の不均衡を解消するには、女性をITエンジニアとして育成すべきではないかと考え、創業しました。
社員の「自己への再投資」のため週休3日制を導入
上原:
現在、Ms.Engineerの社員数はどのくらいですか?また、普段の働き方についても教えてください。

やまざき:
正社員、業務委託などを合わせて30名強です。メンバーは全国に在住しており、関東圏在住者は週2日オフィスへ出社し、遠方のメンバーは月1回あるいは半年に1回出社にするなど、居住地に応じたハイブリッドワークを導入しています。
上原:
一人ひとりに合わせた柔軟な働き方ができるのですね。どのような組織カルチャーをつくっていますか?
やまざき:
パフォーマンスと成長、そして理念である「強く、正しく、美しく」の体現を重視しています。個人目標を設定して業績や組織に寄与するとともに、メンバー自身の成長も求めます。
そして、社会性と経済性を両立する組織であるために、理念を体現することも大切です。「強く、正しく、美しく」の「強く」は、主体性をもつこと。「正しく」は、倫理的な行動を取ろうとすること。「美しく」は、家族と健康より大事な仕事はないという価値観のもとでサステナブルに働き、インパクトスタートアップとして“鮮やかに”成果を出すことを表しています。

上原:
自分や家族を大事にすることは働きやすさにつながると思うのですが、それを「美しく」と表現しているのが素敵ですね。サステナブルな働き方をするうえで、導入している制度や意識していることはありますか?
やまざき:
週休3日制(水曜・土曜・日曜休み)とフレックス制を導入しています。「衣食住」に加え、「自己への再投資」という要素がないと、人はサステナブルに働けないと思うのです。ところが、特に育児をしていると生活が「衣食住」で終わってしまいがちではないでしょうか。そこで、捻出しにくい「自己への再投資」の時間をつくるために水曜を休みにし、副業や自己投資、あるいは休息に使ってもらっています。
上原:
週休3日制によって、経営にはどのような影響がありますか?また、社員の皆さんはどのように受け止めているのでしょうか。
やまざき: 「自由と責任はセット」という前提に基づいて制度を設計し、従業員が自律的に行動することを推奨しているので、週休3日制にしたからといってパフォーマンスが低いメンバーはいません。 勤怠管理はしていますが、必要に応じて朝早い時間から働いたり、逆に育児がある人は定時にあがったりしています。最近入社したメンバーからは、自律的で成熟度が高い組織だという感想をもらいますね。
上原: それは素晴らしいですね。仕事へのコミットメントが高い組織をつくるために、採用面で大切にしていることは何ですか?
やまざき:
「事業共感性」を最も重視しています。当社のミッションやビジョンに高い解像度で共感しているかは、採用プロセスでしっかり見ています。採用候補者のスキルがどれほど高くても、当社の価値観と合わない場合は採用しない方針を貫いています。
また、年齢や学歴は重視しないため、採用の最終決定者である私は候補者の履歴書を見ません。労働力人口が減少する中で、年齢を理由に採用候補者を絞るのは非合理的であり、採用側の怠慢だと考えているからです。

上原:
「採用側の怠慢」という点、本当に同感です。今の働き方や採用方針に至るまでに、壁にぶつかったことはありましたか?
やまざき:
以前は全社でフルリモートワークをしていたのですが、現在は、営業などのビジネス職はハイブリッドワークとし、その他の職種はフルリモートワークを継続しています。職種によって異なる働き方を導入するまでに、苦労がありました。
リモートワークは、業務責任を果たす社員に与えられる「権利」であり、必要な時には出社や出張が求められるものだと考えています。ところが、リモートワークを「出社しなくてよい権利」と捉えられてしまうケースがありました。リモートワークに対する考え方のズレという課題に直面するとともに、職種によって働き方を分ける経営判断をすべきか、葛藤もありました。
当時は、私自身の業務過多という課題感も生じていました。これからさらに業績を上げるためには、カルチャーの変革と自分自身の意識改革が必要だったのです。今後の事業成長を見据えて、一部職種でハイブリッドワークを取り入れる決断をしました。
上原:
そのような経緯があったのですね。やまざきさんは、オフィスへ出社する意義をどう捉えていますか?
やまざき:
立ち話などから生まれるセレンディピティがあることです。お互いの様子を感じることで、予期せぬものが得られることはあると思っています。
そして、小さな組織で、経営者である私が何に時間を割いているかを社員が直接見ることも重要だと考えています。「社長、最近この話ばかりしているな」「こういうお客様が来ているんだ」などと私の「覇気」を肌で感じてもらうことで、経営に対する目線が合いやすくなると思うのです。実際、ハイブリッドワークを取り入れてから、この効果をより感じるようになりました。
日本全国で、女性のAI人材輩出を加速させたい
上原:
最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?
やまざき:
今年は「AI or Die」をスローガンに掲げています。AIを導入するか否かが、企業や個人の将来を決めるという強い危機感をもっているからです。「Ms.Engineerブートキャンプ」でもAIを必須スキルと位置づけ、「AIを使える」だけでなく「AIを作れる」女性人材の育成を強化中です。
AIは、時間やコストを短縮するために役立つテクノロジーです。仕事と育児などで「時間貧困」に陥りがちな日本の女性とは相性がよいと考えています。AIを仕事や生活に組み込めば失われた時間を取り戻せますし、さらにはAI技術者になることで賃金上昇にもつながります。こうした思いもあり、2025年夏、卒業生の高度IT人材が全国から参画する地方女性を中心としたニアショア型の開発ラボ組織「DAIVE」が始動し、AI活用や地域DXの加速を実現しています。
新潟県三条市と連携し、国と自治体の補助金を組み合わせて受講料を無償化するモデルも開始しました。これが大きな反響を呼んでいて、「女性AI在宅ワーク人材」が地域の一大勢力となるモデルケースを作り始めているところです。地方女性の活躍の場をさらに増やしたいと思っています。
上原:
目指す将来像を実現するにあたり、採用面ではどのような人材を求めていますか?
やまざき:
AI人材育成を加速させるため、技術力があり育成も担える人材が必要です。また、会社としてはEXITあるいはIPOを目指しています。当社のアプローチが社会課題解決の手段として有効であることを証明するうえでも、IPOを目指す意味があると思うのです。幹部人材を含めて、IPOを目指すチームに興味がある方とも一緒に働いていきたいと考えています。

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