2023.12.8

不妊治療と仕事の両立が「難しい」と感じる理由と、個人や企業ができること【助産師監修】

#キャリア
#不妊治療
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共働き家庭が増えている一方で、不妊治療中に自身の状況を周囲に打ち明けることができずに人知れず苦しんだり、職場環境や業務特性的に両立が難しく、退職の道を選んだりする女性は少なくありません。

本記事では、不妊治療の現状やなぜ仕事との両立が難しいのか、企業や個人でできることについて考えていきます。

そもそも不妊とは?

現在日本では、夫婦全体の約4.4組に1人が、不妊治療の経験や検査を受けたことがあると言われています。
近年、「不妊治療」という言葉を耳にする機会が増えていますが、そもそも不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をすることなく1年以上妊娠しないことを言います。
妊娠を望んでから1年経っても妊娠しない場合は、病院での検査が推奨されていますが、年齢や家族計画(一世帯あたりがもつ子どもの数や産む時期についての計画)によっては早めに受診するのがよいでしょう。
検査結果によって、治療を必要とする場合は原因に合わせた「不妊治療」が始まります。

晩婚化が進み、妊娠を考える年齢が上昇していることもあり、厚生労働省の調査によると、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%で、夫婦全体の2.6組に1組の割合と言われています。
コロナ禍で治療控えをした人もいる中、2021年には体外受精で産まれた赤ちゃんは11人に1人と過去最多を更新しました。

原因について、排卵がないケースや子宮内膜症を患っているケースなど、女性に着目されがちですが、男性に原因がある場合や原因がそもそも分からないケースもあります。
男女ともに一定年齢以上になると、加齢により妊娠がしにくくなることには変わりありません。
そして、女性に原因がない場合でも、女性の体には治療に伴う検査や投薬などにより大きな負担がかかるケースが多いですが、男性も治療に伴う検査や治療による通院で同じく負担がかかります。

不妊治療の方法

不妊の原因は女性側、男性側でほぼ半々と言われているため、2人で一緒に検査を受けることが大切です。
不妊の原因が子宮内膜症など病気にある場合は、まずは病気の治療を優先するケースもあります。

不妊治療の方法については、自然に近い形で妊娠する可能性があると判断された際の「一般不妊治療」、一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合や疾患がある場合などの「生殖補助医療」があります。

▼一般不妊治療

・タイミング法 / 通院して排卵日の予測精度を高め、排卵日の少し前に性行為を行う
・排卵誘発法 / 排卵を誘発するための排卵誘発剤を使用する方法
・人工授精 / タイミング法で妊娠できなかった場合、精液から精子を採取し、直接子宮内に注入する方法
(※射精障害や勃起不全等の男性不妊の場合には、こちらから行われることがあります)

▼生殖補助医療

・体外受精 / 女性からは卵子を、男性からは精子を取り出して体外で受精させ、培養した受精卵を子宮に戻し、妊娠率を高める方法
・顕微受精 / 体外受精のように自然受精を見守るのではなく、1つの精子を体外で直接卵子に注入して受精させ、その後、受精卵を培養して子宮に戻す方法

突然の「不妊退職」も?仕事をしながら不妊治療をしている人の割合

厚生労働省が行った調査によると、不妊治療と仕事の両立ができず約16%(女性の場合は23%)の方が退職を選択しています。
また、仕事と不妊治療を両立している方からは職場の理解がないと両立は難しいとの回答が得られています。
実際、退職以外に「両立ができず不妊治療をやめた」「両立できず雇用形態を変えた」方の割合は合わせて約19%にまでのぼります。

仕事と不妊治療の両立が難しい理由

なぜ両立が難しいのか、例をご紹介いたします。

通院回数が多く、急な休みが必要となる

仕事との両立が難しい一番の理由は通院の回数によるお休み取得です。
不妊治療は卵子の育ち具合によってスケジュールが変わり、「明日採血にきてください「明後日採卵しましょう」等、急にスケジュールが決まることが多く、体調や医師の判断によって増減はするものの、月経周期ごとに一般不妊治療で4~7日、生殖補助医療で4~10日ほどの通院が必要と言われています。
また、診療時間以外に2~3時間の待ち時間があることも多く、早退や遅刻だけではまかなえないことも多いです。

精神面や体力面での負担が大きい

通院回数の多さや治療による体への負担から体力面的にハードな部分も多くありますが、「上司や同僚から理解を得られない」「休みが多く周りに迷惑をかけて心苦しい」「喪失体験を繰り返す終わりのない辛さがある」等、精神面の負担が多いのも特徴です。
また、「終わりの見えない治療」にストレスを感じる方が多く、治療が長期間になるに従って抑うつ症状があると診断されるケースもあり、精神的な支援対策も必要とされています。

職場など周りの理解やサポートが得られない

仕事と育児の両立のための制度は年々整ってきているものの、“子どもが産まれる前”の制度はまだあまりありません。
昇進できなくなるかもという不安や、周りへ迷惑をかけている心苦しさなどから治療をしていることを知られたくないと思う方もいます。
通院によるお休みや遅刻早退等、どうしても周りにサポートをお願いしないと両立が難しい治療である一方で、職場内で不妊治療の認識が浸透していないケースも多く、業務上だけでなく精神面の配慮のためにも社内研修の実施をするなど安心して働き続けられる環境整備が求められます。

仕事との両立のためできることは? 

仕事との両立をしていくために、今、できることはなにがあるでしょうか。
長期戦になることも考慮し、例をご紹介いたします。

職場の関係者に不妊治療中であることを伝える

職場の人に伝えたくないと思われている人も多いと思いますが、伝えることで休む理由づくりをしなくて済む等、少なからず精神的な負担が減ると考えられます。

また、自分の仕事の予定と治療のスケジュール調整が大きなストレスになっている方も多いため、伝えることで職場からの協力を得やすくなり、残業や出張頻度を減らすなどの業務調整に繋がりやすくなります。

柔軟な働き方ができる企業へ転職する

職場によってはまだまだ不妊治療への理解がないケースもあります。
「治療していることを伝えても配慮してもらえない(むしろハラスメントに繋がる)」「現職での両立は難しいが仕事を辞めて復帰はできるのだろうか?」「もし出産したとき仕事を辞めていたら保育園には入れないかもしれない」等、働くことと両立への漠然とした不安はたくさんあると思います。
今の仕事をしながらの両立が難しいと判断している場合、フレックスやリモートワーク、不妊治療への制度がある企業へ転職をする選択も考えてみてはいかがでしょうか。
とくに休まずにできる治療の際は、フレックスタイム制度があると、有効に感じる方が多いので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

たとえば、withworkでは「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトに、ワーキングペアレンツ向けに柔軟な働き方が可能で、仕事と育児を両立したい子育て世代に理解がある企業の求人を厳選してご紹介しています。
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企業側が、仕事と両立したい社員のためにできることは?

企業側が理解を深めることで、社内の離職率が減り、社員もモチベーション高く業務を行うことができます。
また、職場づくりの取り組みが、優秀な人材をひきつけることにもつながり、企業にとってもメリットがあります。

相談しやすい職場環境づくり

まず前提として、相談しやすい職場であることが求められます。不妊治療についてだけでなく、ハラスメントや育児についてなど、相談しやすい環境があることで、働きやすさに繋がります。
基礎知識を理解していない人も多いため、セミナー開催や企業メッセージなどもあると良いです。職場に居づらいと感じさせない環境づくりを整備していきましょう。

不妊治療をサポートする制度づくり

有給取得のしやすさはもちろんですが、フレックスタイム制度やリモートワーク制度など今、使える制度の利用のしやすさをアップさせる必要があります。
制度はあるが使用している人はほとんどいないでは意味がありません。
その他、時間単位の年次有給休暇制度や、失効年次有給休暇の積立制度、不妊治療に係る費用の助成制度などがあるとよりサポートに繋がります。
また、厚生労働省からも「不妊治療連絡カード」という不妊治療の状況や、不妊治療そのものについての概要が記されたフォーマットが発行されているため、活用できる環境づくりができると良いですね。

お互い様の風土づくり

制度がしっかり使える環境づくりとして、制度の周知だけでなく、一緒に働くメンバーに伝えることができる風土の醸成も求められます。

不妊治療に限った話ではなく、生理休暇や介護休暇、闘病の際に使える休暇制度など、だれもが当事者意識をもって、「お互い様」な風土づくりができるとより働きやすい環境になるでしょう。 

まとめ

不妊治療は決してマイノリティではなく社会的な大きな課題になっています。
ですが、厚生労働省の調査において、「貴社には不妊治療を行っている従業員はいますか?」の質問に対し、7割近くの担当者が「わからない」と回答しています。
不妊治療をしている従業員の把握が出来ていない企業が多いのが現状のため、まずは制度設計のためにも実情把握が求められます。
プライベートなことで職場に迷惑をかけられないという気持ちは十分理解できますが、「両立を応援する!」という職場だと、安心して仕事に打ち込むことができるのではないでしょうか。
自分一人で抱え込まず、企業、職場、当事者で一緒に働き方について考えていける社会になることに期待します。

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監修 / 筒井 八恵

佐賀大学医学部卒業後、助産師として日本赤十字社医療センターでハイリスク妊産婦や家族への専門ケアを行う。企業の就労環境に課題意識をもったことを機に採用・人事支援ベンチャーを経て、「ママリ」を展開するコネヒト株式会社でアカウントプランナー、アライアンスリード、事業開発等を行う。自治体や大学などの教育機関との共創事業立ち上げや研修講師を経験後、XTalent株式会社に参画。企業のDEI推進事業の立ち上げ後、現在に至る。

ライター / 岩ノ 瑠璃子

学生時代に企画、取材、執筆、校正等を学び、20万部発行のフリーマガジンにて2010年からライター業に従事。現在は大手企業の人事職として、日々採用活動に奮闘中。リモートワークも多く、仕事終わりの散歩&ジム通いで体力維持とストレス発散をしています!

この記事の監修者
筒井 八恵

佐賀大学医学部卒業後、助産師として日本赤十字社医療センターでハイリスク妊産婦や家族への専門ケアを行う。企業の就労環境に課題意識をもったことを機に採用・人事支援ベンチャーを経て、「ママリ」を展開するコネヒト株式会社でアカウントプランナー、アライアンスリード、事業開発等を行う。自治体や大学などの教育機関との共創事業立ち上げや研修講師を経験後、XTalent株式会社に参画。企業のDEI推進事業の立ち上げ後、現在に至る。

この記事のライター
岩ノ 瑠璃子

学生時代に企画、取材、執筆、校正等を学び、20万部発行のフリーマガジンにて2010年からライター業に従事。現在は大手企業の人事職として、日々採用活動に奮闘中。リモートワークも多く、仕事終わりの散歩&ジム通いで体力維持とストレス発散をしています!