2024.6.21

不妊治療に悩む人が納得感のある選択ができるように。ninpathが目指す世界とサービスに込めた想い

#キャリア
#不妊治療
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2022年4月、不妊治療が保険適用(年齢や回数の制限付き)となり、経済的負担が格段に軽減されました。
一方で、不妊治療の現場は時間的な拘束や身体的・精神的な負担、キャリアとの両立など課題も多く残されており、共働き&子育て世代の転職サービス『withwork』にも、日々多くの相談が寄せられています。

今回は、不妊治療を記録しながら第三者の治療データを閲覧できる『ninpath』を運営する株式会社ninpathの代表取締役・神田大輔さんにインタビュー。

「不妊治療で涙の流れない世界を創る」というメッセージを掲げ、サービスの開発に至るまでのストーリーや、不妊治療の実情、当事者たちが抱える深刻な課題やリアルな声を伺いました。

ーーninpathを立ち上げたきっかけは?

元々、エムスリー株式会社という国内最大級の医療プラットフォームを運営する企業に勤めており、新規事業や開業医の支援を行っておりました。
年間1000人強の先生と実際にお会いしお話を伺う中で、いわゆる「保険診療」と「自由診療」の仕組みの違いを知り、大きなショックを受けた
ことがサービス立ち上げのきっかけです。

ーーどのような違いにショックを受けられたのでしょうか?

保険診療の場合、基本的には「保険」になっているので、国が「この病気に対しては、この治療をしていきましょうね」といったような、決まったガイドラインがあります。
なので、日本のどこで受けても、ある程度同じ質の同じ治療が受けられます。

一方で、自由診療の場合は、「それぞれの医者が考える良い治療を提供していく」という形なので、クリニックごとに治療へのアプローチ方法が異なります。
もちろん、私がお会いした中で、自由診療でしか受けられない治療を患者さんのためにすごく頑張って行っている先生もたくさんいらっしゃいました。
しかし、治療の良し悪しや適切なクリニックの選び方などに関しては、どうしても患者さん側からは情報を得られにくいことに課題を感じました。
そうした自由診療の領域を、患者さんのためにミスマッチがないようにしていきたいと思いました。

ーー様々な自由診療がありますが、「不妊治療」にサービスを絞った理由はございますか?

10年ほど前に遡るんですが、エムスリー入社前の同僚の話がずっと頭の中にあって。
当時、不妊治療という言葉自体は知っていたのですが、ほぼ無知の状態でした。
不妊治療中の同僚から「自治体から補助が出るから、そういった制度を活用しながらお金やりくりをしてるんだよね」「でも、上限の回数が来るから、補助を続けられない。どうしよう」といった話を聞きながら、漠然と大変なんだな…と感じていました。
なので、自分の中で自然と、自由診療と不妊治療は紐づいていたんです。

そして、実際に事業を作っていく中でたくさんの当事者にヒアリングをしたのですが、元々同僚から聞いていたものとは深さが違う話がどんどん出てきて。
聞いているだけで、涙が出るくらい本当に辛い。
当然、身体的な辛さもありますし、職場で心無い言葉を言われたり、パートナーが全然協力してくれなかったりと、メンタル面における悩みや課題もたくさんあることに気づきました。
目の前で苦しんでいる人たちを楽にしてあげたい、大変ながら治療を進めている人たちに早く結果が出るように支えてあげたい。
そうした想いから、ninpathをスタートしました。

ーーninpathは、アプリで治療記録ができ、管理ツールとして活用したり、自身と似た状況の第三者の治験データと比較できるサービスですよね。サービスへのこだわりについて、ぜひ教えてください。

情報過多な時代、調べるとたくさん情報は出てくるのですが、中には「それって本当?」みたいな情報も出てきます。
どれを信じていいのか分からず、情報の海に溺れてしまうということが、たくさんあるのではないかと思います。
クリニック選びにしても、太田さんのように不妊治療専門のクリニックではなく、どうしても最初は一般的な婦人科に行かれる方もいらっしゃいます。
それ自体が悪いことではないのですが、できる検査が限られていますし、本来は不妊専門クリニックに行ってすぐにでも適切な治療を始めた方が良い方もいらっしゃいます。
後になってから、「あの時、ああすればよかった」といった後悔がないように、ninpathで選択肢を可視化し、子どもを望むすべての方が納得感のある意思決定ができるようサポートできればと思っています。

ーーwithworkのユーザーさんには、仕事と不妊治療の両立に悩まれている方も少なくありません。そうしたお悩みを抱える方へのアプローチもされていますか?

ninpathケア』という、オンラインカウンセリングサービスの提供も行っています。
生殖心理カウンセラーが、不妊治療に関する悩みや課題を一緒に整理していくのですが、「通院による仕事の調整が大変」といったご相談も多くいただきます。
不妊治療を経験している人のうち、3人に1人が両立が困難となり、仕事を辞めているとも言われています。
有給が取得しにくい、リモートワークしづらいなどの環境面での難しさもありますが、そもそも職場での理解が得
られにくいといった悩みもあります。
子どもがほしいからクリニックに通うというのは当然「権利」なので、誰かから咎められるものではないのですが、上司にクリニックに行くためにと有給を使いたいと伝えたら、「いやいや病気じゃないのに、なんで病院に行くために休んだりするの」と言われた、という事例もあります。職場の理解が得られない、でも仕事を辞め
てしまうとお金の面で治療が続けられない。
そういったお悩みを抱えている人はたくさんいらっしゃいます。

ーーカウンセリングサービスの利用者は、どのような方がいらっしゃいますか?

数としては女性が多いですが、男性も増えてきました。
その背景には、そもそも不妊の原因は男女半々ですし、2022年4月から一部の不妊治療が保険適用になったのですが、「最初は夫婦そろって受診し、2人で説明を聞く」ことが適用要件となりました。
これまでは、男性側があまり協力してくれなくて、女性側だけ通院するといったケースが多かったのですが、少なくとも最初の一回は男性も通院しなけばなりません。
そういった通院の負担や、「パートナーが治療を続けていく中で辛そうにしているのを見て心が痛い」「流産し泣いているパートナーへなんて声をかければいいのか分からない。
何もできない自分が辛い」「家に帰ってもそういった状況なので、仕事のパフォーマンスにも影響が出てきた」といったご相談も受けます。

ーー最後に、不妊治療を検討している方へ、メッセージをお願いします。

様々な悩みがある中で、自分の状況を客観的に見つけること、適切に情報を収集し意思決定できることが大切だと思います。
治療自体に迷ったり、メンタル面ですごく辛い時は、私たちのカウンセリングサービスでも良いですし、周囲に知見がある方がいらっしゃれば、内に溜め込まずに相談する、吐き出すというのも1つの手だと思います。

ninpathでは、不妊治療をされている方の意思決定支援を行っていますが、描いているビジョンとしては、養子縁組等を含めた「子どもを望むすべての人たちの意思決定の支援」ができればと思っています。
太田さんのお話にもありましたが、里親や養子といった選択肢ってどうしても後になってしまうんですよね。
治療についてギリギリまで頑張ってしまう、お金が続くまで頑張ってしまう。
そうすると、どうしても年齢を重ねてしまいます。もう少し早い段階でそういった選択肢を持てれば、養子も取りやすかった、というケースもあります。
日本ではまだ法整備がされていませんが、卵子提供や精子提供、代理出産、少し前に話題になっていた子宮の提供など、海外を含めて様々な選択肢があります。
世間からみたら、まだまだ取りにくい選択もあります。
子どもを望むすべての人が安心して、フラットにすべての選択肢を選べるような環境を作るため、我々もそうですし、国が率先して情報発信をもっと強固にしていってほしいと思います。

仕事と不妊治療の両立に悩んだら、withworkへご相談ください

神田さんのお話にもありましたように、仕事と不妊治療の両立に悩む方は少なくありません。
共働き&子育て世代の転職支援を得意とするwithworkでは、「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトに、柔軟な働き方が可能な企業の求人を厳選してご紹介しています。

「まずは情報収集から始めたい」「プライベート面も考慮した求人提案を受けたい」「孤独な転職活動において、1人でも味方がほしい」という方は、ぜひwithworkにご相談ください。

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