2024.8.2

男性の「とるだけ育休」なぜ起こる?夫婦双方にもたらす影響と回避するためのポイント

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共働き家庭の増加や法改正、企業の取り組み等により、男性の育休取得が一般的になりつつあります。
一方で、育休を取得したものの、当事者やそのパートナーにとって満足度の低い「とるだけ育休」になってしまっているケースもあります。

本記事では、とるだけ育休が起こる原因やもたらす影響、とるだけ育休を防ぐためのポイントをご紹介します。

「とるだけ育休」とは?

「とるだけ育休」とは、父親側が育休を取得したにも関わらず、取得期間が数日と短かったり、育児や家事に関わる時間が少なかったりと、「育児をする」という本来の目的を十分に果たせていない状況を指します。
別名で「名ばかり育休」とも言われます。

日本の男性育休の現状

「とるだけ育休」はなぜ起こるのでしょうか。
まずは、男性育休の現状についてみていきたいと思います。

法改正により、より柔軟な取得が可能に

2022年に育児・介護休業法が改正され、男性育休についても変更がありました。
変更の具体的な内容は、例えば「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設されたことです。
「産後パパ育休」は産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回に分けて取得できる休業です。
まとまった日数でなくとも取得できるため、男性育休取得のハードルが下がるのではないかと言われています。
また、上記の法改正により、男性・女性に関わらず、育児休業は分割で取得できるようになりました。
このように、育休の制度は男女ともに柔軟になってきていることが分かります。

育休取得に関心のある男性は多い

2023年にエン・ジャパン株式会社が実施した調査によると、約8割の男性が育休取得に「賛成」、約9割の男性が「育休を取得したい」と回答しています。
また、厚生労働省イクメンプロジェクトの調査によると、若年層(18~25歳の男性)の84.3%が「育休を取得したい」と回答し、さらに、取得期間は25.3%が「1~3ヵ月」、29.2%が「半年以上」を希望しています。
これらの調査から、男性の育休に対する関心度の高さが伺えます。

実際の取得状況

厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性の育休取得率は30.1%でした。
2022年度は17.1%だったため、この1年で男性育休を取得している方が増えていることが分かります。
ただし、冒頭のアンケートの通り、育休を取得したいと考えている男性は約8割と回答がありました。
この回答から、育休を取得したいと考えている方が皆取得しているとは言い難い状況と言えるのではないでしょうか。

3人に1人が家事・育児時間「2時間以下」

2019年の日本財団×「変えよう、ママリと」の共同調査によると、育休を取得した男性の1日あたり家事・育児時間は、「2時間以下」と回答している方が約3人に1人という結果が明らかになっています。
また、夫が育休を取得しないか、育休中の家事・育児時間が少ない場合に、「家事・育児役割分担納得度」等は低いとされ、それに伴い「生活満足度」も低いという結果となっています。

以上のことから、現在の日本においては、男性育休の取得はここ数年着実に進んでいるものの、その分、質も問われているというのが現状となっています。

「とるだけ育休」が起こる原因

主に、夫側の問題と企業側の問題の2つあると考えられます。

夫側の問題

例えば、「育休を取ったはいいものの、何をすればよいのか分からない」「夫自身はやっているつもりだけど、妻からしたら不十分」「自分事になっておらず、言われないとやらない」といったケースがあげられます。
初めての子育てで、かつ事前に子育てのインプットがない場合や、夫婦での話し合いがなかった場合、こういったことが起こりやすいのかもしれません。

企業側の問題

「とるだけ育休」になってしまう原因は、企業側の問題も考えられます。
withworkが実施した調査によると、男性で育休を取得した方でも2割が「取得しにくかった」と回答しています。

理由としては、

  • 「人員に余裕がなく現場に負担をかけるため」
  • 「仕組みは整っていたが、上司の反応はネガティブなものが多かった」
  • 「取ってる人もいなく、仕事量も多く残業も多い部署だったため」
  • 「できるだけ長期間取得したかったが、仕事の都合や収入の不安等で1ヶ月半程度が限界だった」

など、本人の意志とは反して、職場環境から短期間の取得しかできず、結果的に「とるだけ育休」となってしまったケースが見受けられました。

「とるだけ育休」がもたらす影響は?

いくつか具体例をあげてみましょう。

妻のストレスが増える

産後は身体面でも辛く、ホルモンバランスが乱れる時期でもあり、中には産後うつに陥る女性もいます。
そのような状況下で、家事・育児をこなさなければいけないのは、心身ともに大きな負担ですよね。
「それだったら仕事をしてもらっている方が良かった!」と夫が育休取得したこと自体を後悔する声も少なくありません。

希望の子ども数を断念

1人目の育休で家事・育児に積極的に取り組んでもらえないと、「2人目は無理だな」と諦めてしまうこともあるかもしれません。
公益財団法人1more Baby応援団実施した「夫婦の出産意識調査2023」によると、2人目以降の出産をためらう理由のトップは「経済的な理由」であるものの、35%の方が「家庭環境での理由」「家事・育児のサポートを得られない」ことが理由であると回答しています。

夫婦関係の悪化

産後の大変な時期は夫婦のコミュニケーションも大切な時期です。
ダイバーシティ&WLBコンサルタント 渥美由喜さんの調査によると、女性の愛情曲線は、夫が一緒に子育てするか否かでその先の明暗が分かれると言われています。
「とるだけ育休」になってしまうことで、夫婦関係が悪化してしまう、ということも考えられます。

「とるだけ育休」にならないためのポイント

それでは、「とるだけ育休」にならないためにはどうすれば良いのでしょうか。
withworkが実施した調査結果をまじえながら、ご紹介します。

十分な期間の育休を取得する

産後、女性の体調の回復は5週間〜8週間程度と言われていますが、産前の体力まで回復するのは産後3ヵ月〜1年と言われています(参考)。
この時期に、家事・育児をこなさなければいけないのは心身ともに大きな負担となります。

実際に、夫の育休期間が「5日未満」だった妻の6割が「不満」と回答し、「満足」と答えたのは、「2週間〜3ヵ月未満」で64%、「3ヵ月〜6ヵ月未満」で75%、「6ヵ月~12ヵ月未満」で89%と、取得期間が長いほど妻の満足度は高まる傾向にありました。
この傾向は夫側にもみられ、「5日~2週間未満」取得者の半数は取得期間が育休後「適切ではなかった」と回答し、「適切だった」の割合が最も高かったのは「6ヵ月〜12ヵ月未満」でした。

そもそも育休を取得すること自体が会社に伝えづらい、ということもあるでしょう。
しかしながら、育休を取得することは企業側にもメリットがあります。
先述の厚生労働省の調査によると、育休取得を公表したことによる企業のメリットとして、新卒・中途採用応募人材の増加を挙げています。
また、育休取得に取り組んだ企業のメリットとして、コミュニケーションの活性化や離職率の低下を挙げています。
このように、育休を取得することで自分のみならず企業にもメリットがあるということが分かります。
一生に何度もない機会ですので、ぜひ十分な期間の育休の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
また、一度に長期間の取得が難しい場合は、間を開けて複数回の分割もぜひご検討ください。

取得する目的と役割を明確にする

育休を取得する目的と、役割を明確にすることも大切です。
調査によると、妻の満足度にポジティブな影響を与えた夫の育休中の行動は、「家事育児を主体的に行う」「妻の休息時間を確保する」「子どもと積極的にコミュニケーションを取る
」が上位にランクインしています。
これらを意識して、「自身はどんな役割を担うべきか」を意識すると、自然と育休中の過ごし方も変わってくるのではないでしょうか。

互いに納得感のある家事・育児の分担をする

とるだけ育休を防ぐためには、家事・育児の分担割合も大事な要素です。
調査によると、妻が
「満足」と答えたのは、分担割合が「夫3~4割」だと30%であるのに対し、「夫5割」で85%と大きく向上。
「夫婦でフェアな状態」が分岐点となることがわかりました。
さらに、「夫6~7割」で95%、「夫8割以上」で100%と、夫の分担割合が多くなるほど高まる傾向にありました。

家事・育児をプロジェクト化してみる

家事の多くを妻が担っており、育休取得後に悪気なく「何をすればよいのか分からない…」と困る男性もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合は、家事育児を仕事のように「プロジェクト化」する方法がおすすめです。
特に育休は期間が決まっているため、プロジェクトとして取り組むにはぴったりです。
例えば、積水ハウスではIKUKYU.PJTとして育休中に取り組むことのできる家族ミーティングシートというものを公開しています。
そういったものを活用するのも手ですね。

夫婦それぞれリフレッシュする時間を作る

育休というと、「休む」という文字が入っているためゆっくりする時間があるのかな?と思うかもしれません。
しかしながら、実際に育休を体験してみると、家事と育児であっという間に1日が終わります。
私自身(=妻側)の体験談をご紹介すると、1人目の出産直後、雑誌を買ったにも関わらず全く読む時間や余裕がなくて「なんで雑誌なんて読めると思ったんだ!」と笑った記憶があります。
ただ、ずっと休みなく育児を行うのも大変ですから、夫婦それぞれがリフレッシュする時間を意識的につくることが大切だと思います。

妻の精神的な支えとなる

赤ちゃんとずっと家にいると気が滅入ってしまうという方もいらっしゃいます。
睡眠不足で体力がなかなか回復しないということもあるでしょう。
そういったときに精神的な支えになることで、家族の絆が深まるきっかけにもなるのではないでしょうか。

パパ友など、相談相手を作っておく

お互いに同じ立場で同じ悩みを共有することができる相手がいると、息抜きにもなるのでおすすめですよ。
とくに少し先に子育てを始めている先輩パパがいると、生活リズムの様子などを知ることもできますね。

ファミリーキャリアを考えてみる

ハーバードビジネスレビューでは、「ファミリーキャリア」という概念が紹介されています。
これは妻と夫、それぞれ単体のキャリアではなく、ファミリー全体でキャリアの方向性を考えるというものです。
例えば、片方の仕事が主でもう片方が柔軟な働き方をする「リード・キャリア」、平等にキャリアの機会を得て交代していく「交代型キャリア」、いわゆるパワーカップルと言われる「並行型キャリア」などです。
我が家も第一子出産後に夫婦でファミリーキャリアについて話し合ったのですが、お互いのキャリアの方向性が見え、それに伴い家事育児の分担などもどうやっていけばよいのか、目線を合わせることができました。
お互いのキャリアについてあまり話し合ったことがないという方は、このタイミングで話し合っておくことをおすすめします。

仕事と家庭の両立に悩んだら、withworkにご相談を

子どもが産まれるタイミングで働き方を見直すという方は多くいらっしゃいます。

「今の会社のままだと、育休取得は難しいかも」
「2人目を考えるなら今の会社じゃない方が良いかもしれない」

そんな方は、一度転職活動を検討してみるのはいかがでしょうか。
例えば、「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトに、ワーキングペアレンツの転職支援に特化したwithworkでは、働きがいがある&柔軟な働き方が可能な求人を厳選してご紹介しています。

「まずは情報収集からやってみようかな」という方は、ぜひお気軽にLINE登録から始めてみてくださいね。

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育休取得タイミング例

法改正により、育休は分割しての取得が可能です。
目的や役割に応じて、取得タイミングの例をいくつかご紹介します。

例①:産後の妻のケアのため取得する

まずは、産後の妻のケアを目的として取得するというものです。
妻が里帰りをしない場合にはこのような目的で取得することが多いのではないでしょうか。
メリットとしては、産後の一番大変な時期に一緒に育児をすることで苦楽を共にできることや、妻の産後の体力回復を促すことができるといったことが考えられます。

例②:妻の職場復帰と入れ替わりで取得する

次は、妻の職場復帰と入れ替わりで取得するというパターンです。
始めにお伝えしたように、育休は間を開けて2回取得することができるようになりました。
例えば、子どもが1歳になるタイミングで保育園に入れなかった場合、妻は職場復帰をして、代わりに夫が育児休業に入ることもできます。
メリットとしては、妻側が育休延長することなく復帰できるため、片方(多くは妻側)のキャリアの分断を防ぐことができます。
このように、保育園入園まで自宅保育をする目的で、交代で育休を取得するパターンもありますね。
慣らし保育期間中に、夫が育休を取得するというご家庭もあります。

例③:妻と同じタイミングで取得する

2人で同じ目線で子育てをするという目的で、同じタイミングで取得するパターンもあります。
また、2人目以降の出産の場合は、例えば長男/長女のお世話は夫、異新生児は妻、など手分けをするという目的で取得することもあるでしょう。
メリットとしては、夫婦の連帯感が増すということや、家族全員での生活を噛み締めて過ごすことができるということが挙げられます。

まとめ

今回は、男性育休の現状と「とるだけ育休」になってしまう原因とその対策、実際の育休取得でのパターンについて具体例を挙げながら説明しました。
少しでも男性育休の取得が増え、「とるだけ育休」にならず、家族の時間が増え、かけがえのない素敵な時間を過ごせることを願っています。

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監修 / 上原 達也

大学卒業後、株式会社SpeeeにてWebマーケティング・人事などを経て社長室に所属、新規事業や海外法人の設立に従事。その後JapanTaxi株式会社に入社し、事業開発を担当。2019年7月に「フェアな労働市場をつくる」をミッションにXTalent株式会社を設立、代表取締役に就任。“キャリアとライフをトレードオフにしない”という想いからwithworkを立ち上げる。共働きで、2児の育児中(料理担当)。

ライター / なかむら あお

大学院で心理学を修了した元臨床心理士。異業界・異職種への転職を経験。現在週4会社員の傍ら、noteやブログを書いたりアクティブに活動中。著書に「子育てのイライラ、便利家電で解決できます!」がある。男女年子の2児の母でもあり、「育児中でも心に余裕のある暮らし」をモットーにしている。 好きな食べ物はからあげとチャーハン。

この記事の監修者
上原 達也

大学卒業後、株式会社SpeeeにてWebマーケティング・人事などを経て社長室に所属、新規事業や海外法人の設立に従事。その後JapanTaxi株式会社に入社し、事業開発を担当。2019年7月に「フェアな労働市場をつくる」をミッションにXTalent株式会社を設立、代表取締役に就任。“キャリアとライフをトレードオフにしない”という想いからwithworkを立ち上げる。共働きで、2児の育児中(料理担当)。

この記事のライター
なかむら あお

大学院で心理学を修了した元臨床心理士。異業界・異職種への転職を経験。現在週4会社員の傍ら、noteやブログを書いたりアクティブに活動中。著書に「子育てのイライラ、便利家電で解決できます!」がある。男女年子の2児の母でもあり、「育児中でも心に余裕のある暮らし」をモットーにしている。 好きな食べ物はからあげとチャーハン。