女性の社会進出が進むに連れて、夫婦ともに仕事をしている「共働き」の世帯は増加しています。
内閣府の男女共同参画白書によると、ここ20年以上毎年増え続けていると報告されています。
もはや決して珍しいものではない共働きですが、育児をしていると日々の生活を送るだけで疲弊してしまい、何かとお悩みを抱えている方が多いのが共働き世帯の現実。
とくに、家事・育児の大部分を片方が担っている「ワンオペ状態」に、頭を悩ましている方も少なくありません。
共働き世帯が子育てをする大変さはどこにあるのでしょう。
そして、それをどのように解決していけばよいのでしょうか。
子育て中の共働きが大変な理由
時間的な制約がある
子どもとの生活が始まると、生活リズムが一変します。
夫婦だけで過ごしていた頃は、夜遅くまで仕事をし、朝はぎりぎりまで寝て、食事も各自で済ませることができました。
しかし、子どもがいるとそうはいかないことも。
保育園や小学校に入ると、送迎や行事への参加、夏休みをはじめとする長期休暇への対応も必要になります。
子どものために割く時間は想像以上に多く、時間的制約に悩む共働き夫婦も少なくありません。
精神・肉体的な負担
仕事、家事、育児と、目まぐるしい毎日。
子どもを保育園や小学校へ送り出し、やっと出社したかと思えば、体調不良による突然の呼び出しが…。
「親の心子知らず」とはよく言ったもので、子どもにも感情があり、いつも言うことを聞いてくれるとは限りません。
子育ては、自分の力でコントロールできない場面が多く、ストレスを感じるのは珍しくありません。
夫婦で協力し合っても、共働きがゆえに都合がつかず、ワンオペ育児になることも。その負担の大きさから心身ともに疲弊している夫婦も多いでしょう。
キャリアとの両立
共働き夫婦が増加する一方で、子育てをしながら働くには厳しい環境に置かれている方も少なくありません。
とくに、仕事を通じて達成したい目標や実現したいキャリアがある方にとって、時間的制約がある中での仕事と家庭との両立に限界を感じることも。
福利厚生が整っていても、周囲の理解が得られずにうまく活用できないことや、時短勤務にしたことで希望の業務に携われなくなるといった状況に陥ることもあります。
子育て中の共働きが大変な時期は?
子育ての先輩から「子供が大きくなればラクになるよ!」と一度は言われた経験のある方も多いと思います。
実際のところ子供の年齢別に「大変さ」はどう変わっていくのでしょうか。
出生〜保育園入園前
赤ちゃんが誕生してから、通常1週間程度で退院となります。
早い人は、退院とほぼ同時に二人きりの生活がスタート。
とくに第一子の場合は親も初めてのことばかりです。言葉でのコミュニケーションが取れないうちは、何をやっても泣き止んでくれず途方に暮れることも。
また、出産後の母親の体が元の状態に戻るまでの期間、いわゆる「産褥期」は、およそ6~8週間と言われています。
産後のダメージが残る体で慣れない育児に追われ、頻回授乳や夜泣きで十分な睡眠が取れず、体調を崩してしまう方もいます。
やっと育児に慣れてきた頃には、自分で動けるようになった我が子に振り回されて「結局何もできなかった」と感じる日も少なくありません。
子どもを保育園に入れるために行う、「保活」では、育児をしながら、自治体ごとに異なるシステムを理解し、保育園を検討して書類を整える必要があります。
入園可否が出るまでは、先の生活が不確定な状況もストレスですし、そんな中で仕事復職を見据えた準備も進めていくことになります。
保育園 / 幼稚園
3歳頃になると、本格的に保育園・幼稚園に通う子が増えますが、まだイヤイヤ期が残る子もいます。
初めての集団生活に不安を感じ「行きたくない…」と言い出す子もいるでしょう。
集団生活で懸念される感染症。
マスクや手洗いなどの感染対策は、一人で徹底するにはまだ難しい年齢です。
先生方のサポートがあっても、感染症のリスクは自宅保育よりも格段に高くなります。
幼稚園では、平日・日中での行事や保護者会が開催される園もあります。
保育園・幼稚園への入園と同時に職場復帰する方も多いですが、子どもの体調不良や各種イベントへの対応で、急な休暇を取らなければならず、仕事との両立が難しい場面も増えてきます。
また、この頃になると、乳児期に比べ子どもの体力がついてくるので、休日には元気あふれる子どもたちの相手で親の体力が追いつかないことも。
大人だけの時間が確保できなくなることで、夫婦間や友人との間にすれ違いが生じ、心身ともにストレスを抱える方もいます。
共働き夫婦の中には、この時期に第二子を検討する方も多いでしょう。
弟妹の誕生は嬉しいものの、今までのように相手をしてもらえない寂しさから、赤ちゃん返りしてしまう子もいるため、日常生活に影響が出ることがあります。
小学校
小学校入学と同時に立ちはだかる「小1の壁」。
保育園や幼稚園は延長保育が利用できる施設も多いですが、小学校の公的な学童保育は通常18時で終了するところが多く、預かり時間が短くなります。
さらに、共働き世帯が増えたことで、学童の利用希望者も増加傾向にある一方で、受け皿となる施設の整備が追いつかずに待機児童となるケースも。
加えて、小学生になると時短勤務制度を利用できない企業も多く、働き方の変更を迫られる共働き夫婦も多いです。
また、小学校に入ると行事のほかにPTAへの参加や通学時の見守り・旗振り当番といった学校行事以外の役割が当番制で回ってきます。
地域により多少の差はありますが、保育園・幼稚園と比べると親の拘束時間が増えるケースがほとんどです。
子育て中の共働きに多い悩み
共働き夫婦にとって、課題が多い現代。本当は「子育も仕事も両立させたい」という理想があっても、現実はなかなか思い通りにはいきません。
働きながら子育てをする上で立ちはだかる壁には、一体どのようなものがあるのでしょう。
仕事が予定通りに進まない
突然の呼び出しに加え、感染症のシーズンには学級閉鎖や看病の末に自分も体調を崩すなど、想定以上に会社を休まざるを得ないことも…。
思い通りに仕事を進められず、ストレスを感じるばかりか、周囲に迷惑をかけていることに責任を感じて自分を責めたり、悩みを抱え込んだりしてしまう方も多いです。
家事・育児の負担が片方に偏っている
いわゆる“ワンオペ”も多く聞かれるお悩みです。
平常時はなんとか回せていても、電車の遅延、同僚の休暇、子供の発熱…。
何かひとつでもイレギュラーがあると、あっという間に破綻してしまうギリギリの生活。
改善したいのに改善策を考える時間すら取れず、負のスパイラルに陥りがちです。
年収や忙しさを理由に、丸投げのパートナー
よくあるのが、「パートナーの方が年収が高い」「拘束時間が長い仕事をしている」といった理由で、一方が「仕方ない」とワンオペ状態を受け入れているケースです。
すぐには現状を変えることが難しいと感じつつも、「なぜ自分ばかり…」と心の中でモヤモヤしてしまう方も少なくないでしょう。
中には比較的夫側も時間の融通が利くものの、「家事・育児は女性が担当するもの」といった固定概念を持ってるがゆえに、妻側に負担が偏っているケースも見受けられます。
周囲の理解が得られない
さまざまな理由から夫婦だけで課題を解決したいと考える方も多いでしょう。
しかし、子供の送迎時間に配慮したスケジューリングや、体調不良による急な休暇に理解を示さない職場も存在します。
男性からは「子どもがいる女性には終業間際に仕事を依頼しないのに、男性には関係なく仕事を振ってくるため、育児に参加したくても定時で帰れない」という声も聞かれます。
共働きが今ほど浸透していなかった時代に子育てを経験した親世代からは「子どもに寂しい思いをさせてまで働く必要があるの?」「今は子育てに専念して、落ち着いたら仕事復帰すれば良い」などの言葉をかけられることも。悪気はないとわかっていても「理解してもらえない…」と傷ついた経験を持つ方もいるでしょう。結果として頼れる場所がなくなり、行き詰まってしまう夫婦も多いです。
実家が遠く、頼れる人がいない
育児は主体的に関わってくれる大人が多いほど余裕をもって取り組むことができるものです。
人手として最も有力視されるのは実家の両親ですが、現役で仕事をしていたりそもそも遠方に住んでいたりすると、なかなか実家を頼るということが難しく、仕事と両立する上での差し障りのひとつとなりえます。
自分の時間や睡眠時間が取れない
子どもがある程度の生活行動を一人でできるまでは、自分の時間を持つことが難しい状況が続きます。
趣味の時間はおろか、最低限のTO DOをこなすために睡眠時間を削らざるを得ないことも。
また、ひとり時間だけでなく夫婦ふたりの時間もなくなった、という家庭も多いのではないでしょうか。
子どもとの時間が確保できない
「子どもとの時間も大切にしたいけど時間がない…」と悩む共働き夫婦も多いでしょう。
忙しさに追われる毎日。やっと迎えた週末も、子どもの習い事や平日できなかった家事の片付けで1日が終わってしまい、子どもとの時間が取れないことも。
また、休日出勤や夜勤、残業の多い仕事に就いている方は「そういえば、子どもとちゃんと会話したのはいつだっけ?」となる場面もしばしば。とはいえ「子どものやりたいことは応援してあげたい」「将来を考えるとお金は必要だし…」と悩みは尽きず、結局「現状維持」という状況が続いている方も多いかもしれません。
悩みを放置するとどうなる?
共働き夫婦の悩みは尽きないものの、考える気持ちの余裕や具体的な解決策がないまま時間だけが過ぎることも。
しかし、目の前のことに一生懸命になるあまり、悩みを放置し続けていると、自分でも気づかないうちにさまざまなところで歪みが出てしまうかもしれません。
心身の不調を引き起こす
「今を乗り越えれば」「頼れる人がいないから」と、頑張りすぎてしまう方や、頑張らざるを得ない状況に置かれている方は、いつしか自分自身の疲れにすら気づけなくなるかもしれません。
そもそも子どもが生まれた瞬間から「子育て」という人生のタスクが増えているのですから、今まで通りにいかないのは当然です。
疲れが溜まってしまうことも、思うように行動できないこともあるでしょう。
「親になったのだから頑張るのは当たり前」と感じる方もいるかもしれませんが、あまりに自分を追い詰めてしまうと心身に不調をきたす恐れがあります。
パートナーとの関係性が悪化する
「自分さえ我慢すれば」「相手も忙しいから、時間ができたら相談しよう」など、パートナーへの思いやりから問題を先送りにすると、結果として大きな溝ができ、取り返しのつかない事態を招くこともあります。
さまざまな考え方や状況がありますが、悩みや不満を抱え込みすぎると、考えが偏ってしまいパートナーとの間に価値観の差が生じてしまうことも。
価値観の差が、やがてパートナーへの不信感に変わると「どうせ協力してくれない」「わかってくれるわけない」という思いが募り、悪循環に陥りやすくなります。
そのまま関係性が悪化すれば、最悪の場合「離婚」という選択に至る可能性もあり得ます。
共働き「あるある」の悩みを解消するコツ
できることなら持続的で心身ともに健康な日々を過ごしたいもの。
そのためには、どのようなことを心がければよいのでしょう。
夫婦の家事分担を見直す
家事分担の見直しでは、タスクの内容、1週間の家族のスケジュール、お互いの得意・不得意などを考慮し「二人にとって最適な分担は何か」意見を出し合えると良いですね。
とくに長い育休を取得している場合、職場復帰する時が家事分担を見直す最大のタイミングです。
育休で家で過ごす時間が長い方に家事分担が偏った状態で復職すると、そのままの負担比率になってしまいがちです。
話し合いの時期に関わらず、重要なのは「本音を伝えること」です。
「相手が〇〇だから我慢する(頑張る)」という考えは一旦置いて「今何に困っていて、どんな助けがほしいのか」お互いに素直に伝え合うことが解決の糸口になります。
完璧を目指すのをやめる
抱えているものが多いと余裕がなくなり悩みも増えます。
まずは自分自身が完璧を目指すのをやめ、ここまででOK!と思えるように、意識的にマインドセットしていくことも大切です。
「誰から強制されているわけでもないのに、自分で自分のハードルを上げて自滅しているだけだった…」と気付くことも。
やらなくていいことは捨てる潔さを持つことで、気持ちが楽になり物事がうまく回るようになるかもしれません。
家電や家事代行を活用する
「自分でやるべき」という思い込みから、家電や家事代行の活用にためらいのある方も多いのではないでしょうか。
しかし、使える環境にあるのであれば、一度は試してみるのも一案です。
調べたり試したりする手間はかかりますが、試行錯誤したからこそ、我が家流の最適化が見つかるはずです。
柔軟な働き方ができる企業へ転職する
育児・家事・仕事の中で、人によっては「最も環境を変えやすいのは仕事」という場合があります。
仕事と育児を両立している社員が多い部署への異動を希望することで、働く環境を変えることもできるかもしれません。
一方で、なかなか希望を聞いてもらえず、「転職した方がよさそう」となるケースもあるでしょう。
そして、「しっかりと正社員として働きたいし、責任ある仕事がしたい。
でも、育児などで時間に制約のある場合、選考で不利になるのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合は、仕事と育児を両立したい子育て世代にある企業の求人を紹介している転職エージェントを活用するのも1つの手です。
たとえば、withworkでは「キャリアとライフをトレードオフにしない」をコンセプトに、ワーキングペアレンツ向けにリモートワークやフレックス制度を積極的に導入している企業の求人を厳選してご紹介しています。
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共働き夫婦の役割分担例
家庭内ですぐに改善できることの一つは、夫婦の役割分担です。
理想的な分担を実現するには、どのように役割を割り振るのが効果的なのでしょうか。
役割を明確に分ける
家事・育児の分担表を作成して役割を明確にすることで「相手がやってくれるだろう」という思い込みをなくし、抜け漏れを防ぐことができます。
自分の担当と、相手には何をして欲しいのかを明確にできるため、生活リズムにズレがあり相手の動きが見えづらい家庭で有効です。
役割をあえて曖昧にする
責任の所在をあえて明確にせず分担を厳密に決めないメリットは、できていない時にイライラしたりペナルティに感じたりしなくて済むところです。
気付いた方が気付いた時にやる、互いの体調や仕事量を鑑みながら臨機応変に対応する必要があり、夫婦同等の家事への価値観やスキルが求められます。
どちらがいいという正解はなく、また一度決めたやり方がずっと通用するわけでもありません。
子どもの成長やお互いの仕事の状況など環境は常に変化します。
定期的に見直しが行えるようにコミュニケーションを大切にすることが重要です。
まとめ
話し合いの時期・内容に関わらず、重要なのは「本音を伝えること」です。
「相手が〇〇だから我慢する(頑張る)」という考えは一旦置いて「今何に困っていて、どんな助けがほしいのか」お互いに素直に伝え合うことが解決の糸口になります。
子供がいる生活になる前と後では、夫婦の会話の総量は変わっていなくても内容が変わり、話題の中心は子供になりがちです。
お互いの仕事の状況、会社の中でおかれている立場を分かり合えるような会話を日頃からしておくと、仕事と家庭を両立する上での前提条件が整理され、しなやかにバランスを変えながら柔軟性のある暮らしができるヒントが見えてくるかもしれません。