2024.3.18

産後クライシスによる離婚を回避!夫婦仲が悪化する原因と対処法【助産師監修】

#出産
#夫婦円満
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待望の子どもが生まれ、夫婦としての絆も深まるイメージの強い産後。
しかし、「産後クライシス」に陥り苦しむ夫婦も少なくなく、離婚に至るケースも存在します。
本記事では、発生原因や未然に防ぐコツ、実際に産後クライシスに陥ってしまった時の対処法についてご紹介します。

産後クライシスとは

産後クライシスとは、「出産後に起こる、夫婦関係崩壊の危機」を指します。
発生の原因は、女性の産後のホルモンバランスをはじめとする心身の変化や生活の変化による疲労、パートナーの言動によるストレスなど複数の要素が入り混じったものといわれており、その原因の比重や背景はさまざまです。

産後クライシスはいつまで続く?

産後クライシスの期間には個人差があり、一般的には産後すぐから長くて数年にわたると言われています。
期間の長さは個々の状況、サポートの程度、生活環境などによって変わるでしょう。
ただ、産後クライシスが終わっても一度薄れた愛情や関係性は元の状態に戻るのは難しく、離婚に至るか薄れたままの状態でキープする場合が多いようです。

産後クライシスにみられる症状

産後クライシスに陥った前後には、以下のような症状がみられます。
これらは、産後のうつ症状に発展する恐れもあるため、一時的なものと放置せず信頼できる人に心の内を話したり、専門家のカウンセリングを受けるのも一つの手です。

【女性側】

  • ネガティブな気持ちでいっぱいになる
  • イライラしやすい、涙もろい
  • パートナーの細かな言動に苛立ってしまう
  • パートナーに理解されていないと感じる、疎外感を感じる

【男性側】

  • パートナーが何を考えているか分からず混乱する、イライラする
  • 一緒に育児をしているつもりがパートナーに認めてもらえず不満を感じる
  • 母親と子どもの間に入れず疎外感を感じる

うつ病との違いは?

産後クライシスは病気ではなく産後の夫婦間の不仲な状態を指しますが、一方で産後うつは主に産後すぐに起こる鬱病のことを指します。
出産や子育てによるストレスや不規則な生活による疲労感や不眠状態から起こるといわれており、気になる症状が続く場合、早めに医療機関で診察を受けたほうが良いでしょう。
産後クライシスに陥った前後では産後うつ病の症状が見られることがありますが、産後うつ病がきっかけとなり産後クライシスが進展することもあるようです。

産後クライシスに陥った夫婦の特徴

では、夫婦が産後クライシスに陥るとどのような状態になるのでしょうか。
ここで示すのは一般的な特徴であり個々の背景や環境、事情により具体的な状態は変わりますが、共通する傾向としてポジティブな人間関係を継続するのが困難である状態だといえます。

  • 些細なことがきっかけで、いさかいになる
  • コミュニケーションが攻撃的になる
  • 会話をすることや一緒の空間にいることが苦痛
  • 互いの言動が癇に障る
  • 相手が行う家事や育児に対して感謝できない
  • 自分ばかり頑張っていると感じる。相手の苦労を慮ることが難しい
  • 頑張りが虚しく感じる。孤独感を感じる

客観的に状況を見ればそこまで感情的になる必要はないのでは…といえる場合もあります。
しかし、産後の目まぐるしい日々の中、自分に余裕が無い状態でなかなか冷静になれないこともあるでしょう。

産後クライシスが起こる原因

産後クライシスの原因は複雑で多岐にわたり、いくつもの要素が複合的に影響すると言われています。
ここでは、よくある産後クライシスの原因についてご紹介します。

出産後のホルモンバランスの変化

出産後はホルモンの急激な変化が起こります。
ホルモンバランスが崩れ、そこに寝不足や不規則な生活、育児へのプレッシャーが加わることで精神的状態が不安定になりがちです。
ささいなことでイライラしたり、悲観して涙がでたり、周りに当たってしまって自己嫌悪に陥り落ち込んでしまうこともあります。

夫が育児や家事に協力的でない

自分が24時間体制で赤ちゃんを見ながら家事にいそしんでいるのに、夫は普段どおり朝起きて出勤し夜遅くに帰って来る…。
そのような夫の姿に不満を抱く妻がイライラを募らせるケースがあります。
夫は夫で仕事を頑張っているはずだけれど、向こうだけ産前と生活が変わらず自由に過ごしているように見えてしまう。
こちらが本当に求めていることを分かってもらえていない…とモヤモヤしてしまう方は多いようです。

夫婦間のコミュニケーション不足

生活リズムが夫婦で異なるとどうしてもゆっくり会話をする時間が確保しにくくなりがちです。
コミュニケーションが慢性的に不足していると、お互い自分なりに相手のことを想って行動しているつもりでも、実は相手が求めていることや本当に伝えたいことを理解できていないことは往々にしてあります。
一方で、コミュニケーションは取れていないけど「察してほしい」という気持ちから、相手が期待と異なる行動を取ると怒ってしまい、相手も混乱させてしまうという事態も見受けられます。

自分の時間を確保できない

どれだけ赤ちゃんのことを愛していても、24時間ずっと時間を誰かと一緒にいることに対し精神的な辛さを覚えることはありえます。
ましてや、産後すぐの赤ちゃんを守る、ちゃんと育てるというプレッシャーで心から気が安らぐ時間は1日の中でさほど長く確保できるものではありません。
たとえば、育児期間中は長い期間出来立ての温かいごはんが食べられなかったり、ゆっくり朝コーヒーを飲む時間すら持てないことだってあります。
そのような日常の些細なことの積み重ねはやがて家庭に対する大きな不満に繋がりかねません。

【未然に防ぐ】出産前に行う、産後クライシス回避のコツ

では、産後クライシスを未然に回避するためにはどうすれば良いのでしょうか。
おすすめは、産前から対策を取ること。
出産後はバタバタしてしっかり考え事をする余裕を持てなくなる可能性があるので、夫婦の時間が取れるタイミングで話し合いを行っておきましょう。

夫婦ともに出産前後で何が起こるか学び、心の準備をする

出産前後のToDoやイベントリストを見える化し、どのタイミングで何が必要か、どんなサポートがあれば助かるかを話し合っておきましょう。
また、産後の女性の心身の変化をパートナーである夫も事前に把握し、やったほうがいいこと、避けるべきことを分かっておくことでトラブルを未然に防げる可能性が高まります。

家事や育児の役割分担を決めておく

産休育休中は妻が家にいるとはいえ、四六時中赤ちゃんのお世話をしながら出産前までと同じ家事の分担となるとかなり負担が重くなることが考えられます。
産後は身体の休息も大切であることも踏まえ、家事や育児の役割バランスを見直しておきましょう。
なお、産前に計画していても実際産後になるとうまくいかない、というのはよくあること。必要に応じて適宜見直しすることも想定した上で柔軟に決めておきましょう。

出産後のサポート体制を構築しておく

もし親きょうだいなど夫婦以外の家族と同居している、または近くに住んでいるのであれば関係性によっては困った時に助けてもらうことが可能でしょう。
一方、夫婦2人で育てていくご家庭であれば、自分たちで何とかしようとしても限界がある時もあります。
産前の余裕のあるタイミングで自治体や民間の相談窓口やベビーシッター、一時預かりなどのサービスを確認や利用検討をしておくと、いざ辛い時に頼りやすいですし「自分だけで抱え込まなくていいんだ」と気持ちに少し余裕ができるかもしれません。

パパ育休や男性育休の取得を検討する

近年、男性の育休取得推奨の風潮が表れてきましたが、法改正でもそれを後押しするように育児・介護休業法改正が行われ、その一貫で産後パパ育休(出生時育児休業)が生まれました。
業種・職種によっては取得が難しい場合もあるかもしれませんが、夫には産前早めのタイミングで育児休業を取得できないか相談し、職場にも相談するよう伝えましょう。

【妻向け】産後クライシスへの対処法

産後クライシスに陥った際、妻と夫それぞれの対処法の一例をご紹介します。
その過程にとって適切なアプローチは各ご家庭の状況や産後クライシスの主な要因によって異なりますが、いずれにせよ双方自分の気持ちや感情を無理に押し込まず、解決に向けて前向きに対処していきましょう。

自分に起こっている変化を客観的に分析する

妊娠出産時はホルモンバランスの変化や出産育児への不安などによりどうしても情緒不安定になりがちです。
それはもともとの性格とは関係なく、誰にでも起こりえること。
ネガティブな感情に支配されそうになったら「これはホルモンのせいなんだ」「これは仕方ないことなんだ」と、一度客観的に自分を見つめましょう。
ネガティブな感情を家族へ向ける前に、冷静に対処できる可能性が高まります。

夫に困っていることを冷静に伝え、協力を仰ぐ

自分が辛いときは、がまんしたり察してもらうのを待たず、素直に自分の気持ちや助けてほしいことを夫に伝えましょう。
「同じ家族なのにこれくらいのことも分からないの?」「お願いするのもしんどい、やってほしいことを分かってほしい」と思う気持ちも湧くかもしれませんが、家族も他者であり何でも100%分かるわけではありません。
具体的にどういうことをしてもらえると助かるのかを言葉で伝えるようにしましょう。

ベビーシッターや家事代行を活用する

仕事や趣味で一人の時間を確保したい時や用事がなくてものんびりしたい時もありますし、そのような気持ちに対して罪悪感を抱く必要はありません。
ベビーシッターや家事代行の利用も積極的に検討しましょう。
産後は業者を調べる時間や体力の余裕がない可能性もありますので、できれば産前から利用できるサービスの情報収集をはじめておくのがおすすめです。

短時間でも自分の時間を確保する

育児休業中は仕事を休んでいるからのんびりできるのでは?と思われることもありますが、実際のところは自分の時間を確保するのは簡単なことではありません。
たまには家族に相談して1人の時間を確保するようにしましょう。
1日丸々休息を取るのはなかなか難しいかもしれませんが、たとえばほんの数時間美容院に行く、カフェで読書する、友達と話す、映画を見る、趣味の時間をつくるなど、ささいなことも息抜きになります。

【夫向け】産後クライシスへの対処法

産後クライシスの対処に努めるのは妻だけの役割ではありません。
夫側もできることがたくさんありますので、他人事とせず当事者として向き合うようにしましょう。

妻の変化を受け入れ、状況を理解する

妊娠前、産前と産後で妻の性格や態度が大きく変わり戸惑う方は多いかもしれません。
前述の通り、女性は妊娠出産によりホルモンバランスが大きく崩れると共に、身体の変化や育児のプレッシャーで気持ちが不安定になっています。
そのことを理解し変化を受け入れた上で、相手に対する言葉や行動を意識してみましょう。

家事育児でできることを探し、実践する

日中は仕事で忙しく、帰宅したらのんびりしたい気持ちもあるかもしれませんが、日中奮闘しているのは妻も同じ。
やっている内容や環境は異なっても、1人で頑張り続けるのは辛いものです。
育休中で家にいるなら家事や育児は妻がするのが当たり前、という価値観は脱ぎ捨て、日中はお互い別の場所で頑張っている、家に帰ってきたら一緒に頑張るという気持ちで出来ることから実践してみましょう。

妻がストレス解消できる時間を作る

妻が育休中で仕事をしていなくても、育児や家事で日々ストレスが蓄積されています。
場合によっては相談する人や頼る人がおらず、鬱憤を抱えているかもしれません。
早く帰れる日や休日など、自身に余裕がある時は妻が自由時間を持てるよう声を掛けるようにしましょう。

柔軟な働き方ができる企業へ転職する

上記に比べて少しハードルが高いかもしれませんが、もし今あなたが育児や家事をはじめとする家族のサポートが難しい環境で仕事をしており、今後の家族のあり方を考えたいのであれば思い切って転職するのも一つの手です。
その場合は、1人で悩みながら探すよりも転職エージェント、とりわけワーキングペアレンツの働きやすさに注力するエージェントに相談することで可能性が開けるかもしれません。

たとえば『withwork』は、キャリアとプライベートのどちらも諦めずに働ける柔軟な働き方が可能な求人を厳選して紹介している転職サービスです。
すぐに転職先を探さずとも、そういった企業の情報収集やお悩みの相談相手として登録を検討してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

産後クライシスは夫婦が乗り越える大きな試練といえますが、そこにはこれまでご紹介したような予防策や対処法が存在します。
自分たちで打開するのが難しい時は大きなトラブルや家庭の崩壊に繋がる前に信頼出来る人に相談する、カウンセリングを受ける、行政や民間サービスを利用するなど第三者の力を借りつつ柔軟に乗り切っていきましょう。

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監修 / 筒井 八恵

佐賀大学医学部卒業後、助産師として日本赤十字社医療センターでハイリスク妊産婦や家族への専門ケアを行う。企業の就労環境に課題意識をもったことを機に採用・人事支援ベンチャーを経て、「ママリ」を展開するコネヒト株式会社でアカウントプランナー、アライアンスリード、事業開発等を行う。自治体や大学などの教育機関との共創事業立ち上げや研修講師を経験後、XTalent株式会社に参画。企業のDEI推進事業の立ち上げ後、現在に至る。

ライター / 酒井 梨恵

社会保険労務士。一橋大学卒業後、複数のベンチャーでの経験を経た後、現在はSaas系ベンチャーにて1人目の労務専任として勤務。労務実務の網羅的な経験や従業員へのきめ細やかなフォローを強みとする。社労士の他に第二種衛生管理者、年金アドバイザー3級、障害者職業生活相談員の資格保有。1児の母。

この記事の監修者
筒井 八恵

佐賀大学医学部卒業後、助産師として日本赤十字社医療センターでハイリスク妊産婦や家族への専門ケアを行う。企業の就労環境に課題意識をもったことを機に採用・人事支援ベンチャーを経て、「ママリ」を展開するコネヒト株式会社でアカウントプランナー、アライアンスリード、事業開発等を行う。自治体や大学などの教育機関との共創事業立ち上げや研修講師を経験後、XTalent株式会社に参画。企業のDEI推進事業の立ち上げ後、現在に至る。

この記事のライター
酒井 梨恵

社会保険労務士。一橋大学卒業後、複数のベンチャーでの経験を経た後、現在はSaas系ベンチャーにて1人目の労務専任として勤務。労務実務の網羅的な経験や従業員へのきめ細やかなフォローを強みとする。社労士の他に第二種衛生管理者、年金アドバイザー3級、障害者職業生活相談員の資格保有。1児の母。